所有期間が5年を超過した不動産を売却した場合には税率が1/2になります。しかし5年以内の短期譲渡でも、税金の負担が必ずしも大きくなるとは限りません。適用できる控除や短期譲渡をするメリットなどについて見ていきましょう。
譲渡所得については不動産売却の譲渡所得 かかる所得税と納める時期は?にてご紹介していますので、気になる方はご参照ください。
5年以内に不動産を売却すると税金が高くなる?
購入(取得)から5年以内に不動産を売却すると税金が高くなることがあります。まずは不動産を売却した時の譲渡所得に対する税金の仕組みを見ていきましょう。
5年以内の短期譲渡所得と5年超の長期譲渡所得
不動産を売却した時の所得は、5年以内に売却した場合の「短期譲渡所得」と5年を超えて所有して売却した場合の「長期譲渡所得」を区別して考えます。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
税率を比較してみると、5年を超えた長期譲渡所得にかかる税率は短期譲渡所得の場合のおよそ1/2となっています。
こうして税率に違いを設けているのは、短期的な譲渡が盛んに行われることで市場での不動産価格が不安定になるのを防ぐためです。マイホーム売却では投機的な売買が繰り返されることは少ないので、特別な事情がない限りは長期譲渡所得となるよう5年が基準となっているのでしょう。
なお、税率は不動産売却益(譲渡所得)に乗じて納税額を算出します。したがって、どれだけ税率が高くても売却益がなければ税負担が重くなることはありません。
10年を超えて所有している場合の特例
10年を超えて所有していると、一定の要件を満たすことでさらなる優遇税制が適用されます。
長期譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
6,000万円までの部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
6,000万円を超えた部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
5年以内の短期譲渡所得に対する税率と比較すると、約25%の差があることがわかります。不動産売買では、短期間の投機的な売買が盛んに行われてしまうと、市場が安定しません。このため長期所有に対する税率を段階的に優遇することで、市場のバランスをとっていると考えることができます。
長期間保有した不動産を売却して新しい不動産に買い換える場合にも、一定の要件を満たすことで、税金面の優遇措置を受けることができます。
買い替えの特例が適用できると、不動産売却で生じる譲渡所得税がその時点では課税されず、買い替えた不動産を将来売却する時に合算して納税することができます。
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短期譲渡にも適用できる控除・特例
不動産の売却ではいくつか控除などの特例を適用できることがあります。これによって短期譲渡であっても税負担を減らすことができるので、ご紹介します。
3,000万円の特別控除の特例
マイホームの売却では、一定の要件を満たすと譲渡所得から最大で3,000万円まで控除できます。例えば5,000万円で取得したマンションが3年後に7,000万円で売れた場合、差額は2,000万円になりますが、控除の範囲内なので譲渡所得の課税はなくなります。
このように控除が適用できると、短期譲渡所得であっても金額によっては負担がなくなります。まずは特別控除の特例を適用できるのか、確認しておくといいでしょう。この特例については不動産売却での3,000万円特別控除の特例とは?で詳しくご紹介しています。参考にしてみてください。
住宅ローンが残っているマイホームの特例
取得から売却までに年数が経っていないと、多額のローンが残っていることもあるでしょう。住宅ローンが残っている不動産の売却で譲渡損失(譲渡所得がマイナス)が生じた時にも適用できる特例があります。
まず住宅ローン残高が売却代金より大きく且つ譲渡損失が生じている場合には、要件を満たすことで、譲渡損失をその年の他の所得から控除することができます。さらに、控除しきれなかった分は翌年以降3年間まで、控除を繰り越すことができます。(ただし2019年10月現在、この特例は令和元年の12月31日までの取引が対象です。)
これら2つの特例が短期譲渡所得では適用できます。税負担への影響は譲渡所得の場合と譲渡損失の場合でそれそれ違いますが、いずれも効果的な節税になります。
5年以内の短期譲渡でも税負担がない場合もあります。まずは無料査定から不動産会社に確認してみてはいかがでしょうか。
短期譲渡と不動産売買のタイミング
譲渡所得があった場合でも、基本的に収支がマイナスになるということはありません。そこで、いかにして収支のプラスを大きくするか、物件の築年数や地価の推移などから見ていきましょう。
築年数に応じた物件価格の下落率
建物は新築の時に最も価格が高く、年数を重ねるにつれて価格が下落していく傾向にあります。特に中古分譲マンションなどは、築浅であるほど買い手がつきやすく、高値で取引される傾向にあります。
このため建物が高く売れるタイミングで売却することができれば、5年以内の売却で税負担があっても結果的には得をしていると考えることもできます。
また、建物は新築の時が最も価格が高いので、新築で購入した不動産は「取得費」が高額になります。このため、いざ査定してみると3,000万円の枠を超えることは少ないです。
地価が高い時に売却する
土地の売却においては、所有期間が長いからといって価値が下落することはありません。
現在は、東京オリンピックなどの影響もあって地価は上昇傾向にあります。不動産の価値は時勢によって変わるものなので、仮に短期譲渡所得に該当しても、地価が高い時に売却できればこちらも結果的な収支はプラスになる可能性があります。
■東京都財務局出典 – 公示地価
築年数や市場を考慮すると、早く売却した方がいいこともあります。結局のところ、不動産は売りたい時が売り時なのかもしれません。
短期譲渡でも、まずは無料査定をしてみてはいかがでしょうか。場合によっては税負担について確認することもできます。
相続や贈与を受けてから5年以内の不動産売却
相続や贈与によって取得した不動産を5年以内に売却する場合には、短期譲渡となってしまうのでしょうか。不動産の所有期間について簡単にご紹介します。
元の所有者の取得日から5年で税金を計算
譲渡所得にかかる税金を計算する時、取得日は元の所有者が取得した日から計算します。このため相続を開始した日や贈与を受けた日から5年以内かどうかは、税率には関係ありません。
なお、相続した不動産の売却を検討している場合は、相続を開始した日から3年以内に売却をすると適用できる特例などがあります。相続した不動産の売却については相続不動産は売却すべき?売却時の譲渡所得税と保有する場合の固定資産税にて詳しくご紹介しているので、ご参照ください。
相続や贈与によって取得した不動産がいくらで売却できるか、無料査定をしてみてはいかがでしょうか。