私はマンションを2回購入し、1回売却している。新築マンションを購入し、売却してより利便性の高い新築物件に買い替えたのだ。

新築物件を購入するのは、意外に簡単だった。不動産会社には手続きや支払いなどに関する資料は整っていて、いつまでに何を用意すればいいか丁寧に教えてくれた。また、面倒な手続きはすべて代行してくれた。100%買い方を理解していなくても、購入する上で支障はなかった。けれども、買うより売る方が断然難しい。売却となると「売却の方法、フロー」などは一様ではなく、知識不足だった。ところが、「どのくらいで売れるのか知りたい」「早く売りたい」の一心で、近くの不動産会社Aに駆け込んで相談した。

担当者は、査定を兼ねてその足で物件を見に来た。A社は、マンションの売り主である大手不動産会社のグループ会社。チラシや雑誌など広告もよく見かけるため安心感があった。また、売却を依頼するのにお金がかかるわけではない。話をするうちに、つい雰囲気にのせられて、その場で売却を依頼する契約をしてしまった。

契約後、新しく購入予定のマンションの販売会社Bの担当者にその旨を報告した。「一般媒介契約」にしたかを聞かれた。不動産会社に媒介を依頼する際は、「一般媒介契約」と「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」があるという。「一般媒介契約」は複数の不動産会社に仲介を依頼できるが、「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」は、1社専属で依頼し、他社には依頼することができない契約だ。説明はあったが、よく覚えていない。書類を確認すると「専属専任媒介契約」だった。わからないのに確認もせず印鑑を押してしまったのだ。B社の担当者は「うちでも売却先を探したのに……」と悔しがったが、あとの祭りだった。

A社の力ですぐに売れると期待したマンションだが、なかなか売れず時間だけが過ぎた。私もB社もしびれをきらし、売却価格を200万円下げて、ようやく買い手がついた。

学んだことはいくつかあった。不動産会社にとって、物件を売却する人より、物件を買ってくれる人の方が「大事なお客さん」なのだ。「売りたい」という気持ちが強く、足元を見られて、価格を下げざるを得なかった。買い替えをする物件を販売するB社に依頼した方が、熱心に買い手を探してくれたかもしれない。また、「一般媒介契約」にして、複数の不動産会社に競争してもらえば、より高く、早く売れたのではないだろうか。

私の経験は一例で、全てに当てはまるかどうかはわからないが、不動産を売るには信頼できる会社に頼むことが重要だ。親身になってくれる会社かどうか、しっかり見極めること。そして、契約を締結する前に、契約内容の詳細を確認すること。当たり前のようだが、長く不動産広告に関わり、購入経験があっても浅はかな失敗をするのだ。

媒介契約はくれぐれも慎重に。2社以上に査定してもらい、プロの意見を聞くといいだろう。

 
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