昨年12月に平成29年度税制改正大綱が発表されました。
そのなかに相続税の財産評価の計算に関する改正が盛り込まれていました。
一つは、広大地の評価の計算方法です。
平成30年以降の相続税の広大地の評価の計算は現状の整形地も不整形地も敷地の形状や特性に関係のない一律の計算式から敷地の形状や特性を反映した計算方式に変わるものとされています。
もっとも平成16年に現状の広大地評価の計算方法に改正される前は開発想定図を作成しその開発計画から戸建分譲のために要する公共公益的施設用地(主には道路)として生じる潰れ地を控除した後の地積の割合を補正率として奥行価格補正率にかえて計算するというものでした。つまり奥行価格補正率は考慮せずに潰れ地を控除した残りの面積の占める割合を補正率として適用させ、あとは一般的な土地の評価と同様に不整形地であれば不整形地の補正率を適用して計算するというものでした。
ある意味、平成16年の改正前の考え方に戻っていくような気がしています。
ここで、広大地の評価とはいかなる考えのものであるかを先にお話しいいたいと思います。
広大地評価とはある一定の面積を超える広大な土地で一定の要件を満たす場合には
一定の計算方法でかなりの評価減を実現できる評価方法であり、ここでいう課税要件ともいうべきそれぞれの『一定の』の意味は次の通りとなります。
一定の面積を超える広大な土地とは、原則では、普通住宅地区等に所在する土地で各自治体が定める開発許可を要する面積以上といわれており次の通りとなります。
1.市街化区域
(1)三大都市圏・・・・・ 500㎡(行政によっては500㎡を下回る場合もあります。)
(2)それ以外の都市・・1000㎡
2.非線引き都市計画区域
(1)用途地域が定められている地域・・・1000㎡
(2)それ以外の非線引き地域・・・・・・3000㎡
そして例外として、近隣の地域の状況から地域の標準的な規模が上記面積以上ある場合についてはその地域の標準的な面積を超える面積といわれています。
さらに補足事項として、著しく広大であるかどうかの判定はその土地の上に建物があろうとなかろうと関係なくその土地土地の規模で判定することとされています。
一定の要件とは、大まかにいうと次の要件となります。
(1)戸建分譲住宅に適した土地であること
一定の広大な土地を再有効活用できる方法が戸建分譲しかないといったイメージであり、そのことから分譲マンションや大規模な商業施設の建築が可能と思われる広大な土地は否認とされるケースがあります。
この戸建分譲にしか活用できないといった判断基準として容積率があり容積率200%までは戸建分譲、容積率300%以上となるとマンション適地にみなされるといわれており、ただし、これはあくまで目安であり周辺環境、前面道路の幅員・斜線制限等の法的規制により個別ごとに条件は異なってきますので個別ごとの判断が必要となるわけです。
(2)戸建分譲の計画上、公共公益的施設が必須の土地であること
要は、戸建分譲する際の区画割りの関係上、敷地内に開発行為申請による道路の施設が必要不可欠となる土地であることが必要要件となるわけです。
羊羹切りや旗竿敷地で経済合理的に分譲可能な土地は否認とされるケースがあります。
この一定の要件は現状の広大地評価では上記のような大まかな目安しかなく、今回の税制改正では広大地評価の適用要件を明確にするといわれています。
最後に一定の計算式とは、その広大地の接している道路の路線価(2つ以上の道路に接している場合には一番高い路線価)に次の計算式を計算して求めることとなっています。
路線価×0.6-0.05×地積/1000㎡×地積
つまり1000㎡のト地で前面路線価が10万円の場合
10万円×0.6-0.05×1000㎡/1000㎡=5.5万円×1000㎡=5500万円となります。
なお、広大地評価は上記の簡略化された計算式で統一されていますので整形地も不整形地も同じ面積であれば同じ評価額という結果となることとなります。
ここに、税制改正で広大地評価の計算方式が見直されることとなった要因があったのでしょう。
根本的には課税は公平にあるべしという考えがあります。
課税公平主義とも呼ばれています。