日本でも、高額な敷金・礼金制度が否定的に捉えられたりすることもある。国によって様々な不動産の制度があるのは当然だ。

韓国でも、「チョンセ」・「ウォルセ」といった賃貸制度が存在する。


「ウォルセ」とは、日本の不動産賃貸契約と同様、敷金礼金をとり月額いくらで貸す制度。

「チョンセ」というのが韓国独特の賃貸制度で、入居時に一定の金額を「保証金」という名目で物件を借りたい人から物件のオーナーへ渡す。保証金はその物件の3割から5割程度だとされており、高額の保証金を渡しておけば「契約期間内ならば賃料はタダ」、「出ていく際に保証金返還」などといった凄い制度だ。

日本の不動産業界では考えられず、不動産のオーナーにメリットが少ないと考えてしまいそうなシステムだが、実は韓国ならではのメリット満載。

約30年前に生まれた「チョンセ」のシステムだが、当時の韓国の金利は約10%。多額のお金を預けておくだけで、一定の金利を受け取ることが可能だったのだ。

高水準の金利が落ち着いてもメリットは存在した。韓国では不動産投資が活発で、ソウルを中心に不動産価格も高騰し続けたからだ。まとまったお金を運用していれば、月額の賃貸料などアテにしなくても利益が簡単に出ていた環境があった。

ここまで、このチョンセのシステムはうまく韓国の経済の中で機能していた。

少し前の日本のメディアでも、「クレバー」、「羨ましい」、「オトク」などと評価されていたぐらいだが、当時は個人的に大きな違和感をもっていたものだ。

このシステム自体、上手くいかない日がくるのではないか」、と。少なくとも、予想されるであろう金利の低下と経済成長の鈍化では回るはずのないシステムだった。

サムスンなど韓国の製造業に問題が出始める2015年ころの韓国経済の中で、韓国不動産市場は高騰。(「政治に経済に大混乱の韓国・・・次に来るは不動産バブルの崩壊?(/column/h-s/19126/)」)でも書いたが。

チョンセシステムの問題点は、経済の影響を受けやすいということだけではなかった。

不動産オーナーの「モラル」にこそ、一番の問題があったのだ。

経済がうまく回っていたころは保証金は多くても半額程度だったが、高い所では7割から8割、酷い所では不動産価格以上の保証金を提示する異常な不動産オーナーも。

実は、韓国にはチョンセ以外にも日本とは「甲乙関係」「甲の横暴」という違う習慣があった。

「甲」とは今回では不動産オーナー、「乙」とは借り手を指す。

韓国では「甲」の力が極端に強く「乙」の力が弱い。「家賃滞納したからスグに追い出すなんて横暴だ!」なんて訴えが日本では出てくるが、韓国ではありえない。オーナー側が一方的に上げた家賃でも支払えなければ即座に追い出されるのが当たり前であり、コレを韓国の庶民は「甲の横暴」という。

保証金や家賃の一方的なつり上げは、不況下で苦しむ韓国の人々を苦しめ「家を借りることができない多くの韓国国民」を生み出した。韓国国会議員のキム議員も苦言を呈したが、悪徳不動産オーナーは意にも介さない。

更に高騰させるためにチョンセが組織化したり、複数の詐欺事件まで発生している始末だ。

不況下の中で不動産価格と一緒に庶民の不満も高騰させているチョンセ。

韓国政府と韓国の習慣が高止まりさせた韓国バブルがはじけたとき、更に苦しむのは韓国民だろう。

不動産に限らない話ではあるが、「一時的に利益は出るかもしれないが長続きがしないであろうシステム」を広く一般化させることは危険である。

 
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