こんにちは。税理士の花光慶尚です。個人が土地を譲渡した場合の取扱いを中心としてコラムを連載しておりますが、そもそも譲渡した土地はどのように手に入れたものが多いかご存じでしょうか。国土交通省が公表している平成27年土地保有移動調査(平成26年取引分)土地取得原因別-圏域区分別土地取引件数・割合によると、個人が売り主となっている土地のうち、その土地の取得原因の55.0%は相続により取得したものとなっています。特に、三大都市圏以外の地方圏の場合には61.2%と高い割合となっています。日本経済の発展に伴い、不動産市場も成熟してきたとはいえ、個人の場合には相続を起因とした土地取得が依然として多いことが統計上も確認できます。

さて、相続による取得した土地を売却する場合、取得費の求め方がポイントになるケースが多いです。譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、その計算要素である取得費は、土地の場合は買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額、建物の場合は購入代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた額となります。ただ、相続で取得した先祖伝来の不動産の場合、購入時の売買契約書が紛失していたり、そもそもなかったというケースが少なくありません。そのように資料がなく、取得費が分からない場合などには、取得費を売った金額の5%相当額とする概算取得費の特例を使うことになります。

ところで、めぼしい相続財産が不動産しかないというケースの場合に代償分割が行われる場合があります。代償分割とは「遺産そのものが分割できない場合、現金などを代償として、他の法定相続人に支払うことで分割する」方法です。例えば、相続人2人に対して、相続財産が不動産1件しかなかった場合に、一方の相続人が不動産を取得し、その代償として他方の相続人に対して現金を支払うという分割方法が代償分割の代表例になります。

では、この不動産を取得する代償として支払った代償金は、取得費を構成する要素になるのでしょうか。所得税基本通達38-7(1)では、代償分割により負担した債務に相当する金額は、当該債務を負担した者が当該代償分割に係る相続により取得した資産の取得費には算入されないとされていることから、代償金は取得費には含まれないこととされています。これは、支払った代償金は相続税計算上、課税価格からマイナス済みのため、譲渡所得の計算する上で改めて考慮する必要はないという考えによるものです。代償分割により取得した不動産を譲渡した場合にはご注意ください。

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