もうかれこれ15年ほど前の話です。平和で平穏なうちの家系の中で、なんともビックリな相続問題が発生しました!

 とある地方都市に住む私の祖父の従兄弟に当たる、当時90歳を超えていたおじいちゃんが亡くなりました。長男家族と同居していたおじいちゃんは、平凡ながら幸せに長生きし、長男家族にあたたかく見守られながら旅立ったそうです。長男が家を継いでいて、おじいちゃんの面倒一切をみていたので、妹も弟も長男がその家を相続するのが当然だと思っていました。ですので2人とも遺産は何もいらないといい、思い出のある形見の品だけを持って帰ったそうです。おじいちゃんの遺産はというと、長男家族が住む土地家屋とそれほど多くはない預貯金のみでした。遺言書も何もありませんでしたが、とても円満に平和に遺産分割が済んだのです。

 ところが、おじいちゃんが亡くなってまもなく、東京に住む見ず知らずの男性から突然連絡があったのです。なんとその男性はおじいちゃんの息子だというではありませんか!?家族はそんなことは寝耳に水です。突然の出来事に耳を疑ったそうです。どうやら戦後、戦地から帰還したおじいちゃんは2年ほど東京に留まっていたらしいのです。そしてその間に1人の女性との間に子供を儲けていたというではありませんか。そして、非情にも生まれたばかりの子供と女性を捨ておいて家に帰ってきたというのですからビックリなんてものではありません!?

 その男性は、おじいちゃんの仏前にお線香をあげたくて連絡をよこしたわけではありません。遺産を要求してきたのです。遺産といってもあるのは長男家族が住む土地家屋とそれほど多くはない預貯金。さあ困りました。

 この男性が間違いなくおじいちゃんの息子だったとして、遺産分割をやり直すとなると、遺言書はないので遺産は兄弟3人とこの男性の4人で均等に分けるということになります。この場合、長男が家を失わずに済む遺産分割の方法は、代償分割しかありません。つまり、土地家屋の価格と預貯金を合わせた合計金額の1/4をこの男性に支払うということです。

 地方都市とはいえ、土地家屋の価格はそう安い金額ではありません。でも、支払えないとなれば不動産を売却して売却価格と預貯金を合わせた金額を相続人4人で分ける、換価分割という方法をとらなければいけなくなってしまいます。

 結局この話がどうなったのかというと、兄弟3人で協力し合ってこの男性にお金を支払って終わったそうなのです。つまり、長男家族は家を手放さなくて済みました。

 実はこの一大事、私は結末しか知りません。ですので、そもそもこの男性は本当におじいちゃんの認知された子供だったのか、協議で解決したのか、裁判になったのか、男性に支払ったのは遺産分割相当額なのか和解金のようなものなのか、詳細は定かではありません。

 ただ1つ言えるのは、長年平穏に暮らしてきた家族でも、相続問題によって突然家を売却しなければならないような事態に陥ることもあるということです。相続の際には何が起こるかわかりませんね。日頃から、親兄弟とはコミュニケーションを密にし、相続の際には慌てないようにしたいものです。 

 
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