都市計画法上の用途制限

 

      平成29年1月30日                    

 

 

Ⅰ.はじめに

今回以降しばらく、都市計画法上の用途制限について、ご説明をしてゆきます。

都市計画は一般の方にとってなじむが薄いものですが、都市計画上の用途制限地区に指定された場合、特定の建築物しか構築することができないため、場合によっては土地を購入した目的が達成できなくなるため、重要な規制です。これからしばらく、都市計画法、建築基準法、港湾法、各市町村の条例などで、都市計画法上の用途制限地区に指定された場合、どのような規制が加えられるのか、について検討してゆきたいと思います。

 

Ⅱ.都市計画の目的

 都市計画の理念は、都市計画法2条に定められています。

 都市計画法2条によれば、都市計画の理念は、第一に、文化的な都市生活と機能的な都市活動を確保すること、すなわち、「住みやすく、働きやすい都市」の建設に都市計画の究極の目標が存在します。

 第二に、このために、土地の利用を個人の恣意に委ねることなく、適正な制限を課すことにより合理的な土地利用が図られるべきことを明記しています。

 ここに「適正な制限」とは、憲法29条に規定する財産権の保障の範囲内において都市計画の目的を達成するために行われる必要最小限度の規制をいいます。

 第三に、農林漁業との健全な調和を図ることも必要とされています。

 ここに農林漁業との健全な調和を図るとは、典型的には、無秩序な市街化によって農業投資の行われた優良な農林地域が浸食されたり、良好な市街地として整備されるべき地域において構造改善的な農業投資が行われたりすることがないように、土地の物理的な形状変更を前提とする都市計画と土地の性状の現状維持を原則とする農林漁業との相互間の機能の調整を十分に行い合理的な土地利用を図ることをいいます。

 

III.都市計画法の主体

 都市計画の主体は都市計画法15条に定められています。

 かっては、都市計画は国の事務に属するとされ、主務大臣が決定し、内閣の認可を受けるとされていました。しかし、地方自治の理念(憲法第8章)に照らし、都市計画は本来都市住民のための計画であり、都市住民に極めて密着していることから、都市計画の決定を国の事務と観念することは合理的とはいえません。そこで、現行の都市計画法15条は都市計画の主体を、都道府県知事と市町村であると規定しました。

 このうち、都道府県知事が決定すべきものは、広域的な見地からの適切な人口配分計画等に基づいて決定されるものに限定され、それ以外の都市計画はそれにより最も影響を受ける市町村に委ねられています。

 

用途制限などは県全体、場合によっては複数の県にも跨る都市計画に関わるものですので、原則として県知事の権限に委ねられています。

 

しかし、横浜市、大阪市などの政令都市にあっては、例外的に政令都市が主体とされています。

 

Ⅲ.結び

 今回は都市計画法上の用途制限のはじめとして、都市計画の目的、都市計画の主体などについて、簡単に述べました。次回以降、都市計画法、建築基準法、港湾法等による具体的な用途制限について、詳しく説明をしてゆきたいと思います。


 たとえば、都市計画法上、工業専用地域として指定された場合、建築基準法上、どのような建築物の建築が許され、どのような建築物の建築が許されなくなるのか、その目的や趣旨はどこになり、違反をした場合の制裁としてはどのようなものがあるのか、そのような規制を回避するためにはどのような方法があるのか、究極的には新たな都市計画の提案が必要になるが、そのような都市計画の提案は可能か、そのような提案は誰に対してするべきなのか、その提案をした場合、どのような手続が必要になり、どれくらいの期間が必要になるのか、などについて説明をしてゆきたいと思います。


 同じように、都市計画法上、臨海地区に指定された場合、市町村はその臨海区内の分区についてどのような構築物の規制が可能か、どのような形式によって規制を加えるか、たとえば条例により、どのような規制が可能か、仮に条例によって、商工区、工業港区、マリーナ地域、修景厚生港区のような分区がなされた場合、どのような建築規制が課されるのか、その具体的な内容、とりわけ、港湾区規制とはどのような意味を有するのか、などについて具体的に説明をしてゆきたいと思います。

 今後の展開をご期待ください。

 

(以 上)

 
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