橋本秋人「使える空き家ビジネスのススメ」

社会問題化する「空き家問題」は不動産業界のビジネスチャンスでもあります。


そこで、空き家に関する講演やセミナーで活躍する橋本秋人さんに、空き家を取り巻くビジネスの羅針盤になるような知識を紹介していただきます。読めば空き家問題、恐れるに足らずと思える連載です。(リビンマガジンBiz編集部)

(画像=写真AC)

このところ勢いに陰りが見られる住宅・不動産市場ですが、都心の優良・希少物件についてはまだまだ動きが盛んです。

ただ、このコラムの主題である「空き家」が多く発生するエリアの不動産取引については、必ずしも活発とは言えません。それが前回のコラムでご紹介した公示価格の二極化にも表れています。

活発ではないエリアだけに取引事例少なく、売却価格決めに頭を悩ませることもあるかもしれません。

それでは、空き家の売却にあたり、価格はどのように決め、売主であるお客様に納得していただくようにすれば良いでしょうか。それぞれの状況によって、考え方が変わります。

売却価格の決め方

(1)通常取引が行われているエリア

このようなエリアにある物件については、ここで取り上げるまでもなく、不動産会社などで売買に携わっている皆さんも、大きな苦労はなく査定ができていると思います。

近隣の取引事例を収集し個別の条件を加味して査定価格を算出し、最終的にお客様(売主)と価格決めをしますが、このようなエリアは、まだ恵まれています。あまり苦労することなく、査定価格にご納得いただけると思われます。

問題は、以下のようなエリアです。

(2)取引事例が全くないエリア、ほとんどないエリア

近隣に取引事例がないと、査定や価格決めはなかなか難しくなります。このような不動産の多くは中心市街地から離れた不便な場所にあります。

実は、私が行っている空き家に関するコンサルティングでは、このような場所にある空き家の相談も多いのです。

この場合、近くの不動産会社にヒアリングしても周辺に取引事例がなかったり、あっても何年も前のために参考にならなかったりすることが多いので、さまざまな工夫をしながら一応の理論的根拠をもって売却価格を提案することになります。

その際に、根拠になるデータとして使えるのが、①相続税路線価、②固定資産税路線価、③固定資産税評価額です。

①の相続税路線価は道路(路線)に面している標準的な宅地の1㎡当りの価格のことで、相続税の課税に用いられます。相続税路線価は公示価格の概ね8割で設定されているので、相続税路線価を0.8で割り返すとおおよその公示価格(≒実勢価格)が算出できます。

例えば相続税路線価が5万円、面積が200㎡の宅地の実勢価格は、

5万円÷0.8=6.25万円 

200㎡×6.25万円=1,250万円 

となります。

次に、②の固定資産税路線価は、固定資産税等を課税するために毎年市町村が公表しており、公示価格の7割を目安に設定されています。この場合の実勢価格の計算も、①の相続税路線価と同じ方法です。

固定資産税路線価が3.5万円、200㎡の宅地の場合は、

3.5万円÷0.7=5万円

200㎡×5万円=1,000万円

となるわけです。

①と②の両方があるエリアもあるので、①、②から算出された価格が異なる場合は、どちらかの方法を選択するか、両方の結果を摺り合せして調整します

なお、①、②については、「全国地価マップ(一般財団法人 資産評価システム研究センター)」で閲覧できます。

しかし、①も②も定められていないエリアもあります。

その場合は③の固定資産税評価額を使います。お客様から固定資産税評価額を教えてもらい、その価額を②と同じように0.7で割り返して計算します。固定資産税評価額は毎年市町村から不動産の所有者に送付される固定資産税納税通知書に記載されています。また市町村で評価証明書を取得しても分かります。

なお、計算によって算出された価格はあくまでもひとつの目安で、実際の取引では全く当てはまらないことも往々にしてあります。不動産価格は、売り手と買い手のニーズの強さ(=どれくらい売りたい気持ちが強いか、どれくらい買いたい気持ちが強いか)によって大きく左右されます。これらは、あくまでも売却のスタートラインとして一応の根拠がある参考価格程度とし、そこから他の条件や事情を考慮しながら、売却価格を検討していくことになります。

(3)買い手から直接聴く

不動産会社で売買に携わっている皆さんは経験されているかもしれませんが、空き家・空き地を売買する際に、買い手が隣地や近隣にいるケースはよくあります(詳しくは次回以降の「どのようにして売るか?」で解説します)。

この場合は売値を提示せずに、買い手からいくらなら買いたいかを聞き出し、その金額について売却の可否を検討する方法もあります。特に隣地が買い手の場合、客観的な相場とは関係なく、自分にとっていくらなら買う価値があるかという主観的な判断で買値を提示されることが多いのですが、不動産価格の本質をついた考え方かもしれません。

>>続き:【事例紹介】それでも売れない!?空き家の対策とは

 
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