橋本秋人「使える空き家ビジネスのススメ」


社会問題化する「空き家問題」は不動産業界のビジネスチャンスでもあります。そこで、空き家に関する講演やセミナーで活躍する橋本秋人さんに、空き家を取り巻くビジネスの羅針盤になるような知識を紹介していただきます。読めば空き家問題、恐れるに足らずと思える連載です。(リビンマガジンBiz編集部)

前回は、

①一戸建て貸家、②シェアハウス、③民泊、④福祉施設(グループホームなど)

について解説しました。

今回は⑤非住宅としての活用について解説します。

ダイクマチ・外観(筆者撮影)

⑤非住宅

住宅として利用していた建物を住宅以外に転用する活用方法は、空き家自体の有効活用だけではなく、地域の活性化への好影響も期待できます。

実際に、2つの活用事例を見てみましょう。

築50年超の長屋を店舗&事務所&シェアオフィスに転用 『ダイクマチ』

埼玉県川越市は池袋駅から東武東上線で約30分に位置し、最近は東京から近い観光地として外国人観光客からの人気も高い街ですが、その一方で市街地に老朽空き家が目立ってきています。

この状況に危機感を持った川越市では、空き家対策の一環として、リノベーションにより遊休不動産を活用し、さらにエリアの価値向上につなげることを考えています。そのために、2016年から「まちづくりキャンプin川越」という実践的なイベントの開催を始めました。

蔵造りの建物が立ち並ぶメイン通りの交差点を曲がり、県道沿いに見えてくる築57年の2棟6戸の店舗付き長屋を活用した事例を紹介します。

この建物でも老朽化が進み、10年以上も1世帯しか入居がない状態が続いていました。

この長屋の再生を手掛けたのが川越エリアでリノベーションを手掛ける株式会社80%(以下80%)です。

「まちづくりキャンプin川越」に参加した同社代表取締役の荒木牧人さんたちは、市の産業振興課とも協力しながら、長屋のオーナーから建物2棟を借上げ、リノベーションによる活用を進めました。

その結果、老朽化した長屋は『ダイクマチ』として、カフェ、居酒屋、貸し事務所、コワーキングスペースなどに生まれ変わりました。

特に特徴的なのは、今年2月にオープンしたコワーキングスペース(シェアオフィス)です。

コワーキングスペースは都心・駅近という常識を覆し、郊外・駅徒歩10分以上という立地にも関わらず、使い勝手の良さとリーズナブルな賃料で人気を集めています。主にウェブ・アプリ開発系のフリーランス、主婦、企業のサテライトオフィスなどで利用があり、ほぼ定員に達しています。

ダイクマチ・コワーキングスペース(筆者撮影)

この事業では、80%がオーナーから建物を賃借し、リノベーションの上、テナントに転貸します。

リフォーム費用は80%が全額負担するため、オーナーの費用負担はありません。その分オーナーへ支払う賃料を低く設定し、転貸賃料との差額をリフォーム費用の回収に充てることになりますが、回収期間は5年としています。

同様のスキームは、東京都や神奈川県を中心に、空き家をオーナーの費用負担なしでリノベーションし、サブリースを行っている株式会社ルーヴィスが先駆けとして知られていますが、賃料水準が低い川越で事業を成り立たせるための工夫として、荒木さんたちは「セルフリノベーション」という手法を用いました。

リノベーションをテナントと一緒に行い、またリノベーションイベントとして参加者を募集することなどで工事費の削減を図りました。それでも事業資金の不足した分は、クラウドファンディングを実施し、工事を完成させました。このような手法は、同時に情報発信としても効果があり、地域でも注目される事業となっています。

ちなみに『ダイクマチ』は現在の町名である川越市連雀町の旧町名である「大工町」からネーミングしています。

さらに『ダイクマチ』では、定期的にコワーキングスペースの利用者などによるセミナーやイベントも開催し、外部への新たな情報発信や地域との共生も図っています。

>>2ページ目:空き家は東京都内でも増加!柔軟な発想で活用に成功!(続き)

 
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