タワーマンションの固定資産税は階数に応じて補正が行われる

昨年12月8日に2017年度税制改正大綱が公表され、居住用の高層建築物(以下、タワーマンション)にかかる課税の見直しが盛り込まれました。その内容は次の3点になります。

(1)固定資産税額を各区分所有者に按分(あんぶん)する際に用いる専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差違による床面積あたりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率により補正する。

(2)その補正率は、タワーマンションの1階を100とし、階が一を増すごとに10を39で除した数を加えた数値とする。

(3)その他、天井の高さや付帯設備の程度などについて著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行う。

現行では床面積が同じであれば、階数に関係なく固定資産税は同額になります。しかし、タワーマンションの高層階と低層階では分譲価格に大きな開きがあるため、所得に応じた公平な税負担がなされていないとの指摘から、税務当局が“補正”に動き出しました。

安倍一強政権のなか、大綱が可決・成立するのは間違いありません。2018年度から新たに課税されることとなる新築のタワーマンション(ただし、2017年4月1日前に売買契約が締結された住戸を除く)から、補正を加味した固定資産税額が課されるようになります。

高層階と低層階で管理費に「階数差」を設けるのは必然の流れ(?)

さて、ここからが本題です。専有部分の床面積を階層の差違によって補正することで、管理費と修繕積立金の金額の算出方法にも影響を及ぼす恐れが出てきました。

【マンション標準管理規約 第25条2項】
管理費などの額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。

【区分所有法 第14条1項】
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

ご存じ、分譲マンションの管理費と修繕積立金の金額は、上述した条文にあるように「専有部分の床面積の割合」によって算出されています。階数差はまったく考慮されていません。

17年度税制改正大綱の成立によって、固定資産税や不動産取得税の算定に「階数差」を反映させるようになれば、“右へならえ”とばかりに管理費や修繕積立金の算出にも「階数差」を反映させる可能性は否定できません。

「所得に応じた公平な負担」というのが、タワーマンション課税を見直す上での大義名分です。その大義名分がマンション会計にも及ぼうとしています。

昨春、改正された「マンション標準管理規約」では、総会の議決権割合について「階数や方角(日当たり等)などを考慮した価値の違いに基づく価値割合を基準として、議決権の割合を定めることも考えられる」とのコメントが付されました。

高層階と低層階で管理費や修繕積立金に「差違」を設けるのは必然の流れになりそうです。担税力の調整の必要性に迫られているわけです。もう後戻りはできないでしょう。分譲マンションに関する旧来型のルールは見直しを余儀なくされています。

 
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