不動産を売却する際、隣近所の「困った人」について告知すべきか悩む人もいるのではないでしょうか。この点について、仲介不動産会社(宅地建物取引士)が説明義務を負う重要事項説明書の記載事項や不動産売買契約書で定める売手の瑕疵担保責任には具体的な記載がないため、以下のような個別判断を要します。

 

1.反社会的勢力関係者

マンションの場合は管理組合の規約で反社会的勢力の入居を禁止していることが多いため、重大な規約違反居住者として告知すべきです。一戸建てでも通常の物件よりも犯罪に巻き込まれるリスクが高いと考えられるため、やはり告知事項に当たるでしょう。

 

2.騒音トラブル源

売却住戸にも重大な影響を及ぼすほどの騒音を継続的に発生させている住民については、告知すべきでしょう。環境庁告示により定められている騒音基準値(最も緩い基準で70デシベル以下)を常時超える場合は、告知しないと瑕疵担保責任を問われる可能性が高まります。

 

3.汚部屋住人

足の踏み場もないほどの汚部屋は、悪臭、衛生環境の悪化、火災の原因となるため告知事項に該当すると判断すべきです。そもそも重大な問題が生じていなければ、管理組合や近隣住民が汚部屋であることに気づかないはずです。周囲に知られるほどの汚部屋が近くにあることを事前に買手が認識すれば、契約を見送るかもしれません。

 

4.水商売関係者

水商売関係者であること自体は告知理由に当たりません。職業選択の自由は憲法でも保障されています。マンションの管理組合規約にも、職業を理由に入居を拒絶する条項はないはずです。

 

5.引きこもり住人

引きこもり自体が直接的な告知理由になることはありません。ただし引きこもっている人が騒音、悪臭、など何らかの迷惑事象の発生源になっていれば、当該事実が告知事項になると考えるべきです。

 

6.外国人

外国人であること自体は告知理由ではありません。ただし不法就労者のたまり場になっているとか大勢の人が頻繁に集まり騒音源になっているとかの問題があれば、告知対象になる可能性が高いでしょう。

 

通常、不動産売買契約書で定める瑕疵担保責任の有効期間は契約締結日から2年間です。したがって買手が入居すればすぐに気づくような問題点については、事前に告知することが無難です。

 
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