こんにちは。元デベロッパーのコンサルタント皆藤一郎です。先日都心部高層マンションの一室を売買仲介・決済しました。賃借人が居住中のいわゆるオーナーチェンジと呼ばれる取引です。山手線の駅からすぐ近く、某大手デベロッパーの分譲マンションでしたので売り先を見つけること自体は難しくはないだろうと思っていた物件でした。問題は「いくらで売れるか?」です。

*写真はイメージです。

 自分はお客様から「不動産を売って欲しい」と依頼される「元付けの不動産会社」の立場になることが多く、その使命としてはクライアントの期待に応えてできるだけ高く売ることになります。

 売却活動を始めるにあたり、お客様のご意向・ご事情などを丹念にお伺いし、売却価格とスケジュールの見込み、最有効売却先の想定などをお話してご納得していただいた上で進めます。

 この売却価格を決める際に大きく参考とするのは


 ①当該物件、及び類似物件の現時点市場性 
 ②同一建物内の過去取引事例
 ③周辺エリアの類似物件過去取引事例


 です。(その他特殊要因なども実際には加味します)

 売却依頼をいただいた後、今回もいつもと同様上記の調査を始めたところ一つだけ引っかかることが出てきました。

 「同一建物内の過去取引事例が周辺エリアの類似物件過去取引事例に比べて著しく安い」

 ブランドマンションだぞ????
 ハナから投資用ワンルームマンションとしてつくられた物件とグレードが違うぞ???

【原因究明】
 確かに、「自己居住用」としての市場性が高いマンションが賃借人が住んでいる「オーナーチェンジ物件」である場合、郊外型ファミリータイプマンションなどでは市場価格が下がるケースはありますが今回物件建物は都心一等地でありまた、グレードの高さによる管理費他の負担分を考慮した利回りでの比較から見ても周辺他物件に劣る要素はありませんでした。

 キモは、同一建物内過去取引事例を扱った不動産仲介会社がいずれもマンション分譲会社と同じ系列の大手仲介会社だったということです。各事例の元所有者は自分の住むマンションの分譲会社の系列の大手仲介会社だったら安心できるだろうと依頼したのでしょう。

 ははーん。安く売らせたな?
 あくまで推測ですが、両手仲介(売主からも買主からも仲介手数料をもらう)を原則として目論む同社は、高く売ろうと思ったら手間のかかるオーナーチェンジ物件に時間がかかるのを嫌って、付き合いのある不動産買取り会社に安く売らせてしまったという可能性があります。

 たまたま各事例の売主が売却を急いでいて安くてもいいから早く売ってという事情があり時間的利益をとったのかもしれませんが、そんなこと続いておきますかね。

 両手仲介や不動産買取り会社との取引が悪いなどとは言いません。自分もやっていますしむしろ両手仲介は結果的に多いかもしれません。

 大切なのはクライアントの利益を目指して動いたのかどうかということかと思います。自分が楽する方法を選んではいけないでしょう。同一建物内の同一会社による過去取引事例がクライアントの利益の追求の結果であったことを願います。

 弊社に依頼のあったこの建物の物件については、上記の「読み」のもとその事例に惑わされることなく現在価値査定を行って売却価格の決定をしました。

 結果、新築時分譲価格より高い金額で成約・決済となりました。

 
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