土地建物を売るときには売買範囲と権利確定のために敷地の「確定測量」を行ってお隣さんとは民々の境界確定、道路境界は公官庁と官民道路査定を行うことが殆どです。官民道路査定は既に終わっている場合は道路査定謄本を取得すればOKです。

 多くの場合は現況見たままのことが多いですが、時として敷地に「実は道路が食いこんでいた!」場合があります。やっかいなのは「現地を見てもわからない」ことです。さらには法務局備え付けの土地の地図である「公図を見てもわからない」ことすらあるのです。

【事 例】
 「震災復興図」というものがあります。震災といっても2011年の東日本大震災ではなく、「関東大震災」のものです。大正12年、関東大震災後の東京市の復興事業として、内務省と東京市が土地区画整理事業を行ったときの換地寸法、道路幅員等が記載されている図面のことで正確には「震災復興土地区画整理換地確定図」といいます。

 ある土地建物の売買取引で、決済引渡しまでに確定測量を終える前提で売買契約を締結しました。測量、実測図作成、隣地立会いを進めていく中で、何かおかしい、寸法が合わないという話が出てきて測量士により詳しく調査していくと、当該地には震災復興図があることが分かりました。

 そして細部を確認すると、なんと敷地だと思っていたところに枝のように伸びた道路が食い込んでいるではりませんか。しかもそれは実寸幅約20cm、縮尺1/600の公図上で表そうとすると約0.3mmにしかならないため表現されていないというものでした。

 幅が非常に薄い土地でも通常「地番」がついている土地であれば公図の注釈部分に表現されるのですが、古くからの官有地である道路の場合無地番であることが多いのでそのようなことが起きてしまったのだと思われます。

 境界を確定するという作業においてはどの部分を誰と確認するのかがわかればいいのですが、恐いのは、既に建っている建物の敷地面積が減るということにつながる場合があるということです。

 その時のケースではまさに敷地だと思っていたところに道路が食い込んでいたので、取引対象の敷地が減少しました。そうすると建物を新築した際に容積率を計算した根拠である敷地面積が減るということですので、場合により容積率オーバーの建物となってしまう可能性があるのです。

 建物が容積率オーバーになると、違反建築物状態になるので売買の際金融機関の融資が受けづらくなることがありますし、取引価格が相対的に安くなってしまうことも考えられます。幸いにもこのケースでは結果的に容積率をクリアできたので問題にはなりませんでした。

 売主が以前建物を新築する際に確定測量をしていれば売買契約をしてから慌てることもなかったのですが、代々所有してきた土地であると建替えのときに改めて確定測量をするということに思いは至らなかったのでしょう。ただ、建築工事をしたのはそこそこ名のある建設会社だったので工事を請け負う際に留意してくれれば良かったのですが。

 事例として「震災復興図」のお話をしましたが、他に第二次世界大戦により、戦災を受けた都市の復興事業として、東京都が土地区画整理事業を行ったときの換地寸法、道路幅員等が記載されている「戦災復興図」もありますので古くから所有する土地を売買する際には注意が必要ですね。

道路にまつわるトラブルの話はこちらもご参考に↓

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