2017年06月21日
カジコンの 不動産業界地獄耳

マンションを購入していただくお客様から土下座された話

カジコンの 不動産業界地獄耳

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毎週水曜日配信、「カジコンの不動産業界地獄耳」。
業界歴21年、不動産会社専門コンサルタント 梶本幸治さんが、不動産業界で見た・聞いた話を紹介します。


ど げざ[土下座](名・自サ)
地上にひざまずいて、深くおじぎをすること。「―して あやまる」
(三省堂国語辞典 第六版より)




(画像=写真AC)


あなたは「土下座」を見たことはありますか?


土下座といっても、ボンテージ姿の女王様にさせられて、目隠し姿で猿ぐつわを嚙まされている、全身ラバー姿の変態男の話ではありません(それを見る機会もなかなかないですが)。心からの謝罪を込めた正真正銘の土下座です。私の知人であるAさんは、最近そんな土下座に遭遇したそうです。



Aさんは中古不動産の営業マンです。
先日、購入物件を探しているお客さんを、マンションへ案内することになりました。現地集合になり、エントランスで待っていると、約束の時間にお客さんが1人でやって来ました。


見たところ40代前半、小太りでドランクドラゴンの塚地武雅さんに似ています(以下、ツカジさん)。


ツカジさんは「お待たせして申し訳ございません。本日はよろしくお願いします」と深々と頭を下げあいさつしました(注:これは土下座ではありません)。これに対し、Aさんも「いやいや、早く来すぎただけです。早速、室内をご案内しましょう」と答えました。お互い最初は恐縮しきりだったようです。

結局、そのマンションは購入には至りませんでした。


それから1ヶ月ほど、2人いっしょに物件を探しました。


ようやく希望の物件が見つかったころには、ツカジさんはAさんにすっかり心を開いていたそうです。ツカジさんは今年40歳、賃貸に母と2人で住んでいました。しかし、なんと半年ほど前から同い年の彼女ができ、プロポーズするためにマンションの購入を決意したとのこと。


「付き合ってたった半年で…?」


Aさんは、少し引っかかるものを感じましたが、そこは不介入です。そういったカップルもいるのだなあ、と思っていました。ツカジさんは続けて「我が家に嫁が来てもらったのに、賃貸住宅では格好悪いですからね。母も彼女を気に入っていて、嫁として合格だって言ってます」と嬉しそうに言います。

正式な契約日が決まり、契約場所もマンションの売主が依頼していた不動産会社の事務所に決まりました(Aさんは買主(ツカジさん)だけを担当する不動産会社という立場でした。このような形での契約を「分かれ」と呼びます)。




(画像=Pixabay)



幸せなマンション購入のハズが…


契約日当日は、激しい雨が打ちつけるあいにくの天気となりました。


契約場所である事務所には、売主、売主担当の不動産会社、そしてAさんが揃い、あとはツカジさんを待つばかりです。しかし、定刻になってもツカジさんは来ません。


「あんなに時間をきっちり守る人なのに…」


Aさんは初めて会った日のことを思い出していました。

約束の時間から10分ほど経った頃でしょうか、激しい雨音に交じって原付バイクのエンジン音が聞こえてきました。エンジン音は事務所の前で止まり、その直後、雨ガッパを被ったツカジさんが事務所に転がり込んで来ました。そして、3人が集まっている机に近づくなり、作法にかなった美しい土下座スタイルをとりながら、こう絶叫したのです。


「すみません!マンションの契約は白紙にして下さい!彼女が…彼女が…僕とは結婚したくないって…言う…んです!」


雨音が聞こえなくなるような、大声でした。ツカジさんの顔をつたうのは、雨水なのかそれとも…。

事情が事情なだけに、売主も売主の不動産会社も了解して下さり、Aさんとツカジさんは契約場所を後にして2人で近くの喫茶店に移りました。喫茶店でツカジさんは一言一言、絞り出すように語り出しました。


「彼女は結婚なんて全然考えてなかったみたいなんです。ましてや母との同居なんて絶対に嫌だと…。全ては僕の独りよがりでした」


あの土下座は、申し訳なさからの謝罪なのか、それとも半年間の暴走恋愛の末の悲劇に、ひざから崩れ落ちたのか。ただ、手元には白紙になった契約書だけが残っているだけです。


不動産の広告でよく見る「幸せなマイホーム」を実現するのって難しいものです。家はあくまでも「器」に過ぎません。その器にいれる中身は、じっくり時間をかけて築き上げていくものなのでしょうね。


チョット今回はしんみりしてしまいました。

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