毎週水曜日配信、「カジコンの不動産業界地獄耳」。
業界歴21年、不動産会社専門コンサルタント 梶本幸治さんが、不動産業界で見た・聞いた話を紹介します。

今回は、不動産会社が近所に投函するチラシに関するお話です。(リビンマガジンBiz編集部)

(画像=写真AC)
週末の新聞を広げると様々なチラシが入っています。車屋さん、パチンコ屋さんのチラシなどが多い気がしますが、不動産会社のチラシも結構入っています。
しかし、この「不動産新聞折込チラシ」は年々、効果が薄れています。酷いところではチラシ50,000部を折り込んで、問い合わせ0件なんて不動産会社もあります。
新聞購読者の減少が主な原因だと考えられており、不動産会社の多くは「新聞折込広告」から「個別ポスティング広告」へ手法の変更を行いつつあります。
今日はそんな「ポスティング広告」に関するお話です。
私の知り合いであるGさんは、地域密着型の不動産会社に勤めるベテラン…ですがあまりパッとしない不動産営業マンです。
Gさんの会社でも新聞折込からの問い合わせが激減し、個別ポスティング広告に力を入れることが決まりました。ポスティング広告を実施するためには、個別配布してくれるパート社員を募集する必要があります。日頃営業成績があまりよくない、比較的暇な時間が多いGさんはそのパート採用の担当を命じられました。
店頭に「ポスティングスタッフ募集」のチラシを貼りだしたところ、近所に住む主婦の方が面接に来ました。お笑いコンビハリセンボンの箕輪はるかさん似(以下、はるかさん)で、すごく華奢な体つきだったため、運動量の多いポスティングの仕事はできるのかなと心配になったGさんは、体力面について質問したそうです。はるかさんは、「スポーツ経験などはありませんが、一生懸命頑張ります。ご心配いりません」と真面目な表情で答えました。
早速はるかさんを採用し、週に700枚程のポスティングをお願いしました。ポスティングを始めた季節が春だったこともあり、はるかさんも笑顔で頑張っていました。
しかし、梅雨時に入り蒸し暑くなったきたころから、徐々にはるかさんの様子が変わってきます。表情から精気が抜け、ボーっとしていることが増えたそうです。
心配になったGさんが尋ねても「大丈夫です。お仕事ですから一生懸命頑張ります」の一点張り。
そして、事件は起こりました
その日、Gさんはいつものように川沿いの街路樹に下に営業車を停めて、お昼寝を楽しんでいました。お昼寝にも飽きたGさんは、煙草を一本吸おうと車外に出て、美味そうに紫煙をくゆらせていたそうです。そのとき、ふと川の水面に視線を落とすと、上流の方から大量の紙がドンブラコ、ドンブラコと流れて来るではありませんか。
そして、その大量の紙が目の前に流れてきた瞬間、Gさんは目を疑いました。ドンブラコと流れてきた紙は、はるかさんにポスティングを頼んでいた自社不動産のチラシだったのです。
Gさんは上司に報告し、はるかさんにも事情を聞くことになりました。はるかさんは涙声でGさんに事情を説明します。
「暑くなってきてからどうしても体力的に辛くて。それでもお仕事なのだからと一生懸命頑張ろうと思っていたんです。でもあの日、涼しげな川の流れを見ていると全てを投げ出してしまいたくなったんです。そして気が付くと、チラシの一部を川に捨てていました…ご迷惑をおかけしてスミマセンでした。」
はるかさんは当然、ポスティングスタッフをクビになったそうです。しかし、Gさん自身も上司から「なぜ、あの時間にあんな所にいたのか?何をしていたのか?」ときつく追及され、返答に困ったそうです。
真面目が高じて自らを追い詰め、発作的で出た「チラシを捨てる」という行為を、お昼寝後の煙草タイムを楽しんでいたダメダメ営業マンが見つけるという、何ともコメントに困るお話でした。
 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ