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「家賃を下げましょう」が言えたなら…

以上より、佐賀地裁は本件各不動産の「適正な賃料」は、月額約20万円と認定しました。

つまりこの医師は「適正な賃料」が月額約20万円であるにもかかわらず、毎月約100万円もの家賃を自身の会社に支払っていたのです。

佐賀地裁は医師が自身の会社に支払った家賃が、著しく高額であることは明らかであり、医師の行為は、通常の経済人の行為として極めて不合理であるとして、税務当局の主張を全面的に認めました。

ではなぜ医師は、自身の会社にそんなにたくさんの家賃を支払いたかったのでしょうか。それはこの医師は高額所得者であり、自身の個人としての所得税の税率よりも、自身の会社の法人税の方が税率が低かったからだと思われます。

できるだけ多くの家賃を払えば自身の個人の所得が減って所得税が減少する一方で、自身の会社の法人税は増加します。しかし所得税の減少額の方が、法人税の増加額よりも多かったため、トータルで見ると節税になると考えたものと思われます。

以上により、この医師の行為を認めた場合には、医師の所得税の負担を不当に減少させる結果となることは明らかというわけです。あくまで「適正な賃料」の範囲、すなわち約20万円弱しか必要経費としては認められないとされました。

不動産ビジネスの世界に身を置く人間ならば、家賃には敏感なはずです。特に、賃貸管理会社の社員は空室が埋まらない物件で「家賃を下げましょう」とオーナーに頭を下げることも多いはず。

往々にして、「入居者を連れてくる努力が足らん!」と一喝されて終わることも多いと聞きます。

そんな時、税務当局が協力してくれたなら…と、思った方も多いかもしれません。

 
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