2019年01月29日
税理士 金井義家 ニュースの目利き

税務署をなめていた個人事業主の悲惨な末路

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税理士 金井義家 ニュースの目利き


ちまたにあふれるニュースの中には、不動産ビジネスに役立つ「金のニュース」が存在する。不動産ビジネスに造詣の深い公認会計士・税理士の金井義家さんが解説します。(リビンマガジンBiz編集部)




(画像=写真AC)



今回の「ニュースの目利き」では、消費税等の「仕入税額控除」が全額否認された平成29年5月22日裁決を紹介していきます。税務調査に協力しないと、納める税額が本来の何倍にも高くなる危険性があることを示した事例です。



消費税等の仕組みをイメージしましょう。


税務調査は、納税者から見れば税金を取られるための調査です。「そんなものに協力なんかしたくない!」とへそを曲げたくなる気持ちは分かりますが、本当に協力しないと後で恐ろしいことが…。


今回は、そんなお話です。


最初に消費税等は一体どんな税金なのか、おさらいします。誰もが払っている消費税ですが、改めて整理しておきましょう。


まず、ある商品を仕入先から100円で買ってきて、150円で得意先に転売している卸売業の会社があったとします。この会社が仕入先に実際に支払うお金は、商品価額100円に消費税等8円を上乗せした108円です。一方で得意先からは商品価額150円に消費税等12円を上乗せした162円を受け取ることになります。そして消費税等の申告期限を迎えると、この得意先より受け取った12円の消費税等と、仕入先に支払った8円の消費税等との差額「12円-8円=4円」を税務署に納付することになります。この得意先より預かった消費税等12円から、仕入先に支払った8円の消費税等を差し引くことを、消費税法の専門用語で「仕入税額控除」といいます。



(消費税納付の仕組み)

仕入 100円×8%=8円(仕入先に払った消費税等は8円)

販売 150円×8%=12円(得意先から預けた消費税等は12円)


税務署に納付する消費税等は「12円-8円=4円」となる

8円引くことを「仕入税額控除」と呼ぶ



税務調査に極めて非協力的な態度


家電製品卸売業を営む個人で営んでいる人がいました。今回はこの人が請求人です。


この人はいわゆる「個人事業主」であったのですが、それなりの売上があって、当然に消費税等を納める義務がありました。しかしどういうわけか消費税等に関する各種届出書を提出せず、確定申告すらしていなかったのです。


つまり長年に渡って、本来は納めるべき消費税等を納めず、自分のポケットに入れていたということです。


それに気がついた税務署の調査担当職員は平成27年5月15日、請求人の自宅に臨場し、税務調査を開始しました。ところが請求人は、仕事が忙しいことなどを理由に帳簿や請求書等(以下「帳簿等」といいます。)の提示を拒否したのです。


調査担当職員はこのままでは請求人が納めなくてはならない消費税等の額も確定できないので、請求人に対して、帳簿等を提示するよう求めました。しかし、その後も請求人は帳簿等の提示を拒み続けました。そこで、平成27年9月24日、調査担当職員2名は再び請求人と面接し、このまま帳簿等の提示がなければ「仕入税額控除」が認められなくなる旨を説明しました。


先ほどの数値例でいえばこのままだと「-8円」が認められなくなると説明したのですね。一体全体どういうことなのでしょうか?



帳簿等を提示しないと「仕入税額控除」が認められないと説明


消費税法第30条第7項は、帳簿等を保存しない場合には「仕入税額控除」ができない旨を規定しています。つまり先ほどの数値例でいえば、帳簿等を保存している場合に限り「-8円」ができると消費税法に明記されているのです。逆に言えば帳簿等を保存していないと「-8円」はできなくなり、納めるべき消費税は4円ではなく12円へと3倍に激増してしまうということです。


このまま請求人が帳簿等の提示を拒否し続ければ「帳簿等を提示しないのは、帳簿等を保存していないからだ」とされてしまい「仕入税額控除」が受けられなくなって、納める消費税等が本来の数倍に激増してしまう危険性があるということです。


調査担当職員はこの点について、該当条文を読み上げるなどして約1年間に渡り請求人に繰り返し説明しました。(ご苦労なことですね…)しかし請求人は、それでも帳簿等の提示を拒否し続けました。その理由としては「仕事が忙しい」などと、言っていたそうです…。「そりゃ忙しいのはあんただけじゃないよ!」などと、調査担当職員がぼやいたかどうかは分かりませんが、結局税務署は税務調査において請求人から帳簿等が提示されないことを理由に「仕入税額控除」をしないで消費税等の額を算定し決定処分等をしました。


つまり先ほどの数値例で言えば、帳簿等を提示すれば4円納めれば済む消費税等が、12円も納めなくてはならないということになったのです。家電製品卸売業の粗利益率はあまり高くないため、請求人にとっては本来払うべき消費税等の数倍もの納付を求められたと予想されます。



大慌てで帳簿等を提示したが時すでに遅し


のらりくらりとやってきた請求人ですが、これにはさすがに驚いたのか、再調査の請求をし、その調査においては帳簿等を提示しました。そして帳簿等を提示したのであるから「仕入税額控除」が認められるべきであるなどとして、処分の一部の取消しを求めました。



>>2ページ目:協力しなければ消費税が倍増する!?(続き)

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