税理士の川名智也です。空家に関する第2回目です。

空家の活用方法として賃貸という手段があるとしても、物件によっては賃貸に適さないと決断することもあります。特に実務上よくあるのが、賃貸契約をするか否かの判断が難しいケースです。一度賃貸契約を締結してしまうと、売買しようと考えても賃貸契約があると売買価格が低くなってしまう事もあります。このような場合には、買主が賃貸期間中に収益物件として購入する考えで、利回り計算をしていることが原因と思われます。売却を前提とした場合には、賃貸契約をいつするのかといった論点も生ずると思います。
なお、土地建物を売却した場合には譲渡所得が課税されますが、住宅に関しては様々な特例があります。第2回目は譲渡所得についてご説明いたします。


■譲渡所得の概要
土地建物を売却(譲渡)した事による所得を譲渡所得といいます。他の所得とは分離して所得税・住民税がかかります。所得税は、事業所得、不動産所得、給与所得などを合算した総所得金額について、税額を計算する総合課税方式が主となります。土地建物を譲渡した場合には、他の所得とは区分して合算せず、分離して税額を計算する分離課税方式となります。譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える場合には「長期譲渡所得」、5年以下の場合には「短期譲渡所得」となります。

[所得計算]①収入金額(売却代金+固定資産税精算金)
②取得費(取得金額-償却費)
 ※取得費が不明の場合、収入金額の5%
③譲渡費用(仲介手数料、印紙代、測量費用など)
④所得金額 ①-(②+③)

[税率]「長期譲渡所得」20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
「短期譲渡所得」39.63% (所得税30.63% +住民税9%)

■住宅に係る特例その① 3,000万円特別控除
マイホームを売却し譲渡所得が発生した場合、一定の条件を満たすと、譲渡所得のうち3,000万円までは無税となります。自分が住んでいるマイホームを売る場合だけでなく、住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに売った場合にはこの特例が受けられます。但し、家屋を取り壊した場合には、次の2つの要件に当てはまることが必要です。
 ・その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、
  かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
 ・家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などとしていないこと
その他、収用等の場合の特別控除などの特例の適用を受けていないことや、売り手と買い手が親子夫婦などの関係でないことなど、細かな要件があります。

■住宅に係る特例 その② 空家に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続した空家を、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に売って、一定の要件に該当すれば、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます。この特例の趣旨は空家の抑制で、次のような取引の流れを想定しています。

①空家を取り壊して土地を売却
②空家に耐震性がなければ耐震リフォームを行い、土地建物を売却

結果的に空家を抑制し、市場に流通する場合には耐震性のある住宅とすることを目的としているようです。この流れと目的を念頭においておけば、要件の確認をする際、理解がしやすいと思います。

■住宅に係る特定 その③ 居住用財産の軽減税率
所有期間が10年を超えるマイホームを売却し、一定の要件を満たすと、税率が低くなる制度です。なお、売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていることが必要です。

課税長期譲渡所得の金額      
[6,000万円以下の部分]    14.21%  (所得税10.21% +住民税4%)
[6,000万円を超える部分] 20.315% (所得税15.315%+住民税5%) 


このように不動産、特にマイホームや空家の売却に係る税制は様々な特例があります。今回は売却して所得(利益)が出るケースを想定した特例を中心にご紹介しました。売却をご検討の方は、まず第一に所得が出るか否かの判断をして下さい。
譲渡所得の申告実務上は、購入した時の売買契約書などの書類をもとに「譲渡所得の内訳書」を作成します。つまり、証拠書類に基づき、所得を確定するのです。この際に、書類を紛失していたり、どこに保管している不明といったケースがよくあります。

特に相続した不動産について、契約書が出てこないことも多いものです。まずは、購入時の書類の確認が肝要であると思います。

 
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