最近になって金融関連の情報サイトなどで行き過ぎたアパートローンブームに対し警鐘を鳴らすものが増えて来ました。超低金利と相続税対策を目的に富裕層のアパート建設が増加する一方で、人口・世帯数の減少が確実視され、空室率の上昇など供給過剰感が出始めているというのです。こうした背景があり、金融庁・日銀は金融機関によるアパートローンの急増に監視を強めています。

 どんなに金利が下がっても、企業の設備投資ニーズが増えず、銀行は融資で稼ぐことが難しくなっています。企業向け融資に対し比較的金利が高かった住宅ローンも最近では銀行間の競争が激しくなり、もはや銀行にとってはうま味はありません。アパートローンは

住宅ローンに比べて貸出金利が高く、しかも何億円という大きな単位で貸出残高を伸ばせることから、最近ではどの銀行も力を入れています。

 しかし、競争の激化によりどこかに無理が生じることとなります。アパートローンの場合は多くが不動産業者や建設業者から銀行へ案件が持ち込まれます。そのほとんどは、複数の銀行に持ち込まれる競合案件です。どうしても案件を獲得したい銀行としては、他行よりも早く融資の可否を伝えたいという気持ちになるのは当然です。そのような状況で十分な審査を行うことなく、持ち込み業者からのヒアリングに頼ったり、十分なリスク管理ができていないケースもあります。特に、アパートローンの借り手は富裕層が多いことから、担保と保証さえあれば、物件の収益性を度外視したり、将来の金利上昇リスクや空室率の動向について、判断が甘くなるケースが少なくないと考えられます。

 何より問題なのは、銀行自身が貸出案件のニーズの掘り起こしを行うのではなく、不動産業者による案件の持ち込みが大半を占めることです。その弊害として、銀行自身が顧客ニーズや貸出実行後の事業動向を十分に把握できていない状況もあり得るのです。実は銀行の不動産に対する目利き力は確実に低下しているのです。人口減少や空室率の上昇、さらには金利の上昇という要因に加え、今後は銀行の目利き力の低下が不動産投資のリスクとなる可能性もあります。

 
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