「人生のなかで最も高い買い物」。そうして購入した不動産物件も十数年後、期せずして「売却」することもあるでしょう。そこで不動産会社を回ってみると、意外なことに気がつきます。それは、不動産売却が不動産会社によって異なるということ。なぜ、どのようなことが起こるのでしょうか。


1、不動産売却額を査定しているのは不動産会社「自身」


その理由は「査定」という制度です。売却価格は不動産会社がそれぞれの算出基準で値段を算出しています。もちろん、まったくの白紙から算定するというものではありません。査定額算出方法は不動産会社によって異なり、地域別に概ねの評価額を算出して不動産会社に販売する鑑定会社もあるうえ、大きな不動産仲介グループ会社などは、自社に鑑定評価部門を設置して公平性のある売却価格を算出するようにしています。インターネットの進化にともない、リアルタイムで最新の評価概算額を見られるようにもなってきました。最近、相違幅は少なくなっているのでは、という指摘もあります。

ただ、それでも売却値は不動産会社によって大きく異なります。最初の査定にどうも納得がいかない場合は、複数の不動産会社に依頼をするべきだと思います。




2、いちばん高い売却金額を算出する会社に依頼するべき?

ここから売り手に立って「売却額」を見ていきましょう。不動産売却は、最も高い売却金額を算出した不動産会社に依頼すべきなのでしょうか。残念ながら必ずそうとも言い切れません。たとえば売却適正額を3,000万円とした不動産会社Aと会社Bが並んでいます。そんな横並びのなか会Cが1億円という破格の値付けをしていたとしたら。当然、買い手がつく訳がありません。3,000万円で買えるかもしれなかった物件に3倍以上の値がついているのです。

相場を出すときは、突拍子のある値段を出す業者には要注意です。近隣地の相場や、ほかの不動産会社だったらどれくらいの値段を出すのかを予測しながら、「適正値」を算出していく不動産会社が信用できる業者です。

正反対のケースを考えてみましょう。建物をある不動産会社Dが1,000万円で売却したとしましょう。周囲の物件と比べても格段に低いため、すぐに買い手はつく可能性は高い。もちろんこれは、売り手の所有者、そして不動産会社の利益にはなりません。適正額3,000万円の建物は、3,000万円で売却したときに適正な利益が出ることで適正額3,000万円であって、これが1,000万円では単なるたたき売りです。

つまり高くも低くもない、振り切れていない「相場値」を算出して、それでいて売主に利益を出せるように「少しだけ割高」な価格設定で提案ができる。その売却値で売買契約を締結できる不動産会社がもっとも実力あるというところ。このあたりは会社だけではなく、査定担当や売りぬく営業部隊の実力も大きく関わってきます

3、「買取業者への売却」に注意

不動産売却で買い手が思うようにつかないとき、「買取業者への売却」が選択肢に入ってきます。

買取業者とは、その土地を買い取って細分化して、戸建て用地(宅地)として販売する(これを不動産業界では再販といいます)する業者のこと。日常的に不動産売却地を探しており、売却を開始するとすぐにアプローチをかけてくる場合さえあります。

ただし、この買取業者への売却には注意が必要です。買取業者は売り手から不動産を購入して、宅地として販売するあいだ不動産をストック(所有)して、一戸建てを建築する人に売却していくビジネスモデルをとります。そのあいだで一定のコストを負担するため、一番最初の不動産売却の段階でも、きわめて安い金額で売却打診をします。

 

ただ、買取業者はNGだからと最初から決めつけて売却対象に入れないのもお勧めしません。相場には見合わないまでも、決して二束三文とはいえないある程度の価格で買い取ってくれるのも買取業者の特徴です。買取業者次第という面も。売却直後に売主が見つからないとき、買取業者をどのように選択肢に入れておくかは不動産売却の大きなポイントです。

 
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