家族で相続について話し合いの機会を持つと、親の有する実家について、「相続の時は実家を売却して、現金にして相続人で分け合えばいい」という意見がよく出ます。これは相続方法として適切な方法ではあるのですが、肝心な「時間」が抜けている考え方です。相続による不動産の売却は想定以上の時間がかかることも多く、それは相続の手続き遅延に繋がり相続人を悩ませます。


1、不動産の「共有」は危険?


換価分割が注目される前提に、「不動産の共有は危険」という考え方があります。相続に際に長男と長女がおり、現時点では「幼い頃に長年暮らした実家なので現状を維持する」と合意していたとしましょう。


ただし5年後はわかりません。片や不動産の解体を主張し、片や維持を主張するという場合も。その場合に「両者が不動産の権利を有している」という状況は解決を遠のかせます。そのため相続の段階で、長男には不動産を譲渡する一方、長女には相当分の現金を渡すという、相続には「先の問題を摘み取る」考えが必須とされています。




2、「現金にする」といっても・・


「不動産を売却して現金にする」。相続に際しよく聞かれるこの言葉は、多大な時間と労力を生みます。特に長いあいだ居住していた不動産などは、想定より著しく低い評価額(不動産の現金価値)のため、思ったようなお金が入ってこない場合も。相続において分割協議の前提となる価値基準と乖離してしまいます。


そのため、不動産を売却する場合は何年も前の「生前」から考えておくことが大切。親世代にとって今自分が住んでいる自宅を「亡くなったときにこうする」という話をすることは確かにいい気持ちではありません。ただ、自分の相続を差配することなく、突然「もしもの時」を迎えてしまう可能性は誰しも有しています。

その時に不動産はどれくらいの価値を生むのか、一家の分割協議のなかで、どのような位置づけなのか。これを考えることにより、遺された家族への負担を軽減することができます。換価分割を検討した結果、「不動産を遺した方がいい」という結論になり、不動産を相続する「現物分割」を選択するというケースもあるでしょう。また、将来的に意見の違ったときは「長男が決定する」という書面を遺し、敢えて不動産を分割するという考えもひとつです。どれだけ先の相続トラブルを想定し、対策を打てるか。相続税法の下がったいま、その考え方がもっと浸透する必要があります。

 
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