2015年に相続税が改正となり、基礎控除と法定相続分の変更で相続課税の対象となる世帯が増えたといわれています。ただ、あまり知られていないのが「配偶者への相続」です。


1、配偶者への相続の基本的な形


まず、亡くなった人が「この人に資産を承継して欲しい」という意思がある場合、基本的にその意思は最優先されます。遺す言葉を書いて「遺言」と呼ばれるものです。最近はエンディングノートも流行しましたが、エンディングノートは財産の移動を証明する「法的拘束力」がないため、専門家は遺言の作成を勧めています。


遺言がないとき、遺された家族間で話し合うこととなります。家族間で合意がとれないときは、法律によって決められた法定相続分によって財産を分割し、分割協議書を作成します。配偶者のほかにどのような法定相続人がいるかにもよりますが、配偶者の所有分は1/2~3/4のあいだで決まります。




2、あまり知られていない、配偶者に対する特例


ところが、配偶者に資産を移動されるからといって相続税を課せられると、配偶者の生活が圧迫されます。また、元々の財産は夫婦共有で積み上げてきたものであるのに、亡くなったことで相続税を課せられても納得できません。そこで、配偶者には相続、もしくは生前贈与の段階で、2つの特例が設定されています


配偶者の税額軽減

配偶者の生活保障をする視点から、遺産総額に配偶者の相続分を乗じた金額が16,000万円を下回る場合は16,000万円まで。超える場合も配偶者の法定相続分までは、相続税額が無税となる特例です。

参考:国税庁https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4158.htm

夫婦間の居住用財産の贈与特例

婚姻期間20年以上で、居住用財産を取得する金銭の贈与が夫婦間で行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円までの贈与が非課税となる制度です。「取得する金銭の贈与」となっていますが、これは法律用語です。実務上は契約者の所有名義を配偶者に移すにあたっては、「配偶者が取得する」という意味合いになり、実態は夫婦間の名義移動です。

参考:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4452.htm

この2つの特例の上手に活用すると、多くの場合配偶者への相続は相続税がかからない、という結論になります。制度を知って、賢く利用することがいかに大切かを示す事例です。

 
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