日本には800万戸を超える数の空き家があることをご存じでしょうか。いま、この空き家をどう活用していくか問題となっています。空き家をリフォームして新築同様に売り出せばいいじゃないか、と思うかもしれません。しかし、日本では新築至上主義の方が多く、既存住宅の流通は全体の14.7%でしかありません。なぜ既存住宅が売れないかというと、やはり「地震が不安」、「いつまで住めるかわからない」などといったマイナスイメージが原因のようです。一方、海外諸国をみると、例えばアメリカは80%の住宅が既存住宅です。また、アメリカではDIY(簡単に言えば日曜大工)が一般的なので、住宅を自分たちで補修して使うこともあるのです。

ではなぜ、アメリカでは既存住宅が一般的で、日本では受け入れられないのでしょうか。その理由の1つが、「既存住宅に対するイメージ」です。先に述べたように、日本では既存住宅に対するマイナスイメージが多いのです。2つ目が、不動産業者自身も既存住宅の評価が分からないため、価格をつけられないという問題点があります。この2つを解消する方法の1つが、国土交通省も推進している「ホームインスペクション」です。ホームインスペクションとは、既存住宅の耐久性や劣化度合いを、構造、設備、意匠の観点からチェックする業務のことです。これにより、既存住宅でも一定の品質であるという「お墨付き」がもらえて、「新品同様」であるとか、「古いけれど、まだまだ大丈夫」など、客観的な評価が得られます。また、ホームインスペクションには2段階の診断方法があります。まず簡易診断です。外観チェックで、建物のひび割れや建物の沈下等を調べます。あくまで簡易な診断なので、建物内部のことまでわかりません。2次診断では実際に床下、小屋裏等を調査して、例えば水回りの腐食、劣化をチェックします。

さて、ホームインスペクション業務を行う専門家をホームインスペクターと言いますが、アメリカでは一般的なホームインスペクターも、日本ではまだまだ普及していません。しかし、政府は既存住宅に関する事業を今後の成長産業と位置付けており、注目したいところです。

いま、戸建て住宅に住んでいて将来は売りに出したい人にとっても、ホームインスペクションは役立ちます。現在、新築の家は20年経てば価値がなくなると言われていますが、客観的な評価を得れば不動産業者の顔色も変わってくるでしょう。空き家も減少し、一石二鳥です。今後、少子高齢化が進むであろう日本では、空き家問題の解決とホームインスペクションは必ず付いて回る話です。空き家購入や、持家を売却するときの武器として、覚えておきたいですね。

 
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