IoT・スマートホームサービスを提供するアクセルラボ(東京・渋谷区)。

2020年3月にも当メディア「不動産テック」のコーナーで代表の小倉学社長に取材を行っている。

前回の取材記事はこちら

2020年10月、アクセルラボの親会社であるインヴァランス(東京・渋谷区)が、アパート建設大手・大東建託の完全子会社になったことが発表された。

その裏にはどういった経緯があったのか、またアクセルラボがこれから目指すものとはなんなのか、改めて小暮社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

アクセルラボ・小暮学社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―コロナで在宅などが増え、住まいの環境を良くしたい便利に快適にしたいという要望が高まっているなかでは、IoT・スマートホームに関心が高まっているのではないでしょうか。プラットフォームを提供しているアクセルラボからすれば2020年はどういった年でしたか。

6月頃から、不動産会社からの問い合わせがかなり増えましたね。

「いずれやらなきゃね」と考えていたというところから、一気に「どの会社のサービスを利用するか」という意識に変わったようです。そのなかの選択肢として「SpaceCore」はかなり有力な候補になっています。

―競合のスマートホームサービスとの差別化ポイントはどういったところでしょうか。

一番は、繋がるデバイスの数が恐らくトップクラス、日本一だということです。

スマートホームは、いろんなものとコネクテッドしなければ上手く動きません。ひとつのプラットフォームから、連動したデバイスを動かすことが満足度を高めることは、我々や民間企業の調査でも実証されています。

賃貸のスマートロック運用を押している会社は多いです。ただ、ロックだけ動いても仕方がない。ただの賃貸ソリューションでしかありません。我々の「SpaceCore」にも、彼らが持っているような鍵の管理機能は備わっていますが、そういった一部の機能やデバイスだけではく網羅的に繋がることが重要です。

―「SpaceCore」はプラットフォームサービスです。既存のスマートデバイスに、新しい機能を付与することもできるのですね。

当然できます。

鍵メーカーは鍵の管理機能を持っていないので、我々と繋がることで彼らの鍵は賃貸運用に適した製品になります。

当社はソフトウェアの会社で、それらに機能を追加していけることが強みです。

そういった意味では、かなりのレベルで評価いただいていると思っています。

アクセルラボ・小暮学社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―コネクトする機器が多ければ多いほど満足度が高い。管理会社側でもそういった理解は進んでいるのでしょうか。

段々進んでいますね。

我々は「SpaceCore」の複数のデバイスと繋がり操作できるエンジンを、スマートホームエンジンと呼んでいるのですが、実はそのエンジン自体を提供しているケースもあります。

例えば、数十万人の利用があるアプリを提供している会社に、スマートホームエンジンを提供することで、その会社のアプリで動いているように見えますが、実態は当社のエンジンで動いている、といったこともあります。

―入居者管理アプリの一部を「SpaceCore」のエンジンで提供しているケースもあると。

恐らくウェブUIでこういったエンジンを提供しているのは日本で当社しかありません。

一方で、他社のスマートデバイスやサービスを提供している会社は、結構クローズです。我々はオープンなので、様々な会社がどんどん繋がりたいということで話が進んでいます。

デバイスメーカー側も、こういったアプリを自分たちで作って、常に作り込んでいくことがメイン事業ではありません。不動産会社もアプリを持っていますが、ずっと維持していくことは至難です。

我々がブラッシュアップすることで機能面が向上していく。そのため、繋がりたいという問い合わせも急に増えましたね。

アクセルラボ・小暮学社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―不動産会社が「SpaceCore」に求める機能はどういったものがあるのでしょうか。

増えたのは無人内見ですね。

戸建て業者も無人内見には関心が高いようで、ビルダーや工務店のオンラインセミナーなどの参加も多いです。

あとは家中のUI・UXを高めることを、ハードウェアだけではなくてソフトウェアでやるという考えが段々と浸透してきています。

―以前の取材でも、建物であるハード進化だけではなく、これからはなかのソフトを進化させていくことが必要であると仰っていました。

当社はソフトウェアの会社なので、お客さんのユーザビリティを上げることや、使いやすくする、楽しく過ごすといった、起きるコトやUXを高めることにフォーカスする。

もう一方では、導入していただいた企業向けの機能を充実してきています。例えばアナリティクス機能です。居住者がアプリを使っているのか、どういったものを使っているのか。といったことが分かる。

投資用不動産のマーケットには、オーナーに向けた家賃のレントロールや確定申告の助けになるような機能、あとは分譲マンションの管理組合の運営をクラウドでできるようになど、最低でも2週間に1回は新機能を追加しています。それらは順次プライオリティを決めて進めています。

―賃貸・売買・分譲マンション・投資などサービスのすそ野が広いですね。

僕らが今狙っているのは、賃貸不動産と戸建て分譲の二大マーケットです。

新築マンションのマーケットは実はそんなに大きくない。首都圏でも年間に5万戸ほどしか売られていません。戸建ては年間で60万戸建てられていますし、賃貸住宅も同じぐらい出ています。そこをまず取りに行きたい。そうすると、賃貸住宅の場合は管理者やオーナーが必ずいるので、そこに向けた機能を充実させていっています。

―そういったなかで、2020年10月、アクセルラボの親会社だったインヴァランス(東京・渋谷区)が、大東建託の完全子会社になりました。小暮社長はこちらの代表でもあります。これはどういった経緯だったのですか。

大東建託から話をいただき、1年以上前から話を進めていました。

大東建託は日本全国のほとんどのエリアで賃貸受託供給のトップシェアを取っているのですが、首都圏だけが勝てていなかった。彼らは飛び込み営業が主体で、営業力はあるのですがそれでは首都圏に通用しない。また、RC造ではなく木造なので、それも首都圏では難しい。こういったなかで彼らの至上命題は東京でトップシェアを取ることでした。

そこでオーガニック成長だけではなく、外部のリソースも使おうという方針を打ち出し、企業選定を行うなかで2年連続東京のRCマンション供給数1位だったインヴァランスが挙がったようです。

また、設計部門もRCのノウハウがありませんでした。当社には設計部隊もいたこともあり、シナジーを感じていただけたようです。

そこで新しい取り組みや新ブランドの展開など、1年以上かけてやりとりし続けてきました。インヴァランス社はこれからさらに大きくなっていくでしょうね。

アクセルラボ・小暮学社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―売却が決まったあと、社内からの反発などはなかったのでしょうか。

創業からスタンドアローンでやってきた会社なので、特に古くからいる役員や社員ほど、疑問はあったと思います。

首都圏にはそこそこの大きさのワンルームデベロッパーがたくさんあります。なぜそこそこ成長できたかというと、東京をはじめとした首都圏の人口ボーナスがあったからです。首都圏に人口が集中し、世帯分離も起こっています。しかし、こういった状況も2030年にはピークアウトするでしょう。インヴァランスもトップシェアを目指していました。ただ、あと10年のなかで圧倒的なシェアを取れるかと考えると短い。彼らと組む話をもらったときに、これ以上の組みあわせは無いと思いました。これこそ本当のガリバーです。

インヴァランスに関わる人々を、私一人で連れて行けるところ以上のところに、彼らと組むことで連れて行けると感じました。大東建託も成長意欲がとても強く、そこにもシンパシーを感じ、インヴァランスに対してもよい影響があると思います。

113万戸の管理を持っている会社は、世界を見ても大東建託しかないでしょう。組むべきして組むパートナーだと感じました。成長のために組んだ感じです。

―アクセルラボはどういった位置づけになったのでしょうか。

アクセルラボはまだまだ赤字の会社で、投資段階です。これまでにも数十億単位で投資をしてきました。

これからも、投資する気ですし、数年後爆発的に伸びる事業だと思っています。

そういったなか、インヴァランスからアクセルラボの株を買い取り、大東建託は投資という意味で10%アクセルラボの株を持っています。

今後大東建託の113万戸を超える管理物件のスマート化も見込んでいるため、それなりのマーケットが取れると思っています。

―以前の取材では、小暮社長は「最終的にスマートホーム事業は数社に絞られ、アクセルラボはその1社になれる」と言っていました。

我々はスマートホームのデファクトスタンダードになることを本気で目指している会社です。資金が続く限りこれからもさらに投資を行っていくつもりです。

また、アクセルラボにとっては100万世帯以上のフィールドを持つということで、シナジーがあるディールだったと思います。だから、インヴァランスをバイアウトしたという感覚ではありません。これからも関係性は続きますから。

―アクセルラボとして、これからの目標はありますか。

不動産×テクノロジーで生活そのものをアップデートすることが目的です。

今期は3万件以上の導入を目標にしています。

恐らく、この目標数値は超える結果になるでしょう。コロナの影響で足踏みしているデベロッパーも多いですが、5年のスパンで見ればスマートホーム化の流れは揺るぎません。

アクセルラボ・小暮学社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)
 
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