映画:『君の名は。』(2016・日本)

原作・脚本・監督:新海誠

出演(声):神木隆之介、上白石萌音、市原悦子、長澤まさみ他

「もう、こんな町いややー!来世は東京のイケメン男子にしてください!」

田舎町で育ち、都会に憧れている三葉は、ある日夢を見る。目覚めるとそこは、見覚えのない東京に住む男子高校生の部屋だった。

まだ、夢が覚めていないと思い、東京生活を満喫する三葉だが、夢の中で東京に住む男子高校生と入れ替わっていたのだ。

それから、互いの生活を行き来することで、お互いに興味を持っていく。

本来、交わることのなかった2人が入れ替わりを通じて、日本を揺るがす大きな危機を食い止めていく。

公開されるやいなや話題になり、最終的には興行収入200億円を突破。日本における歴代興行収入ランキングで5位になった大ヒット映画だ。

君の名は。

ヒロインの三葉が暮らすのは、大きな湖が中心にある架空の町・糸守町。

住む家は、小高い山の方にあり、和洋折衷の木造2階建ての家だ。イメージは、明治時代初期に多く建てられていた擬洋風建築だという。

家族3人が朝食を食べる居間は洋風だが、それ以外は伝統的な日本家屋になっている。

主人公の宮水家は代々地元の神社を管理する由緒ある家系であるため、家がとても広い。

日本庭園のような庭に外廊下があり、離れに繋がっている。この廊下と庭園が映像の美しさを際立たせているのだ。

三葉の部屋も昔ながらの床の間や天袋(床の間の上にある収納)がある。床の間には収納ボックスなどが置かれ、急ごしらえで子供部屋にした感じが見受けられる。

一方、もう一人の主人公の、東京に住む男子高校生の瀧は、高いビル群を見渡せる都心に住んでいる。住んでいる場所の設定は、四ツ谷駅近くの新宿区若葉だそうだ。

室内は、恐らく2DKほどに瀧と父親2人で住んでいる。そこまで広くはないが、主人公と父親の2人で住むには十分だろう。

都会のマンションであるため、ダイニングも瀧の部屋もあまり特徴のないつくりだ。

「入れ替わり」を軸に置いている本作品なので、主人公2人の部屋は「いつもと違う」という印象を抱かせるために真逆の雰囲気を出すようにしたと、美術監督がインタビューで語っている。

瀧の部屋は、東京らしい洗練されたイメージで、三葉のお部屋は畳敷きでおばあちゃんの家というイメージだ。

光と影の演出が与える映像の美しさが特徴の新海誠作品だ。時間帯によって同じ場所でも見え方が変わる。

朝、昼、夜での光の加減が作品自体の意味も変えているように感じる。

今までの新海誠作品は、風景の美しさもさることながら、住宅の細部にもこだわって演出していることが分かる。

離れの欄間や襖も美しく描かれている。

そういったこだわりが、この大ヒットを生んだ一つの要因だろう。

余談だが、主人公・瀧がアルバイトするイタリアンレストラン「IL GIARDINO DELLE PAROLE(イル・ジャルディーノ・デッレ・パローレ)」は、監督・新海誠の前作である『言の葉の庭』のイタリア語版タイトルである。

 
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