遺産分割の対象に預金が含まれるかが争われた裁判で、最高裁大法廷は平成28年10月19日に弁論を開いた。最高裁はこれまで預金は遺産分割の対象外としてきた判例を変更すると見られている。

従来、被相続人の預金は相続開始時点で相続人に当然分割されるとされ、家庭裁判所で行われる遺産分割調停においても、相続人間で合意がなければ遺産分割の対象とされて来なかった。

例えば、被相続人の父の預金が4000万円あり、相続人が兄弟の2人のみで、兄が生前に被相続人からすでに特別受益を4000万円受けていた場合、相続人の兄弟の合意がなければ、特別受益を考慮し、4000万円の預金を遺産分割の対象にならなかったのである。

つまり、兄は特別受益を4000万円を受けており、それを考慮すれば、預金は一切相続することができず、弟が4000万円の預金を相続することが公平にもかかわらず、今までの実務では、兄弟の合意がなければ、兄は2000万円の預金を取得することになったのである。そうすると、すでに兄は4000万円特別受益を受けていたのだから、預金の2000万円をさらに取得し、合計6000万円を被相続人の父から受け取ったことになり、弟は預金の2000万円のみしか受け取れなかったことになってしまう。

このような実務について問題提起がされて、最高裁は判例を変更し、このような場合に預金についても遺産分割の対象とする可能性がでてきたということである。

実際、従来は預金は当然に相続人に分割されるという判例があったものの、金融機関の実務では、相続人全員の同意か遺産分割協議書、調停調書などがない限り、相続人の相続分に関する被相続人の預金の引き出しを拒絶していたのである。この実務は一貫性がなく、遺産分割協議書や調停調書があっても、金融機関によっては相続人全員の同意がないと、預金の引き出しを拒絶する例すらあった。

先日、弊事務所に家裁で遺産分割が成立し、●●信金の預金は相談者の方が取得したという調停が成立したので、調停調書を●●信金の支店に持って行って、預金の払い戻しを請求したにもかかわらず、請求を拒絶されたという相談があった。支店の担当者に聞いたところ、裁判をして頂くほかないとのことだったらしい。

調停調書を証拠として地方裁判所に提訴したところ、すぐに●●信金の本部から連絡があり、「訴えを取り下げてほしい。すぐに払い戻しに応じるので。」ということだった。このように相続に関する預金の取り扱いが非常に混乱しているようである。

今回の預金に関する最高裁判例を受けて相続に関する預金実務の運用が整理されることを祈るのみである。ただ、この判例変更で預金実務が更なる混乱を招くかもしれない。

ところで、先日、1級小型船舶操縦士試験の合格発表があった。2級を9月に合格し、1級は2級からのステップアップ受験をした。2級からのステップアップの受験は、学科の追加14問を受験するだけであり、14問中10問正解すれば合格である。2級は勉強しすぎて100点であったので、今回の1級は最低限の勉強時間で合格を目指し、試験前日と試験の当日のみの勉強で受験した。結果は14問中11問正解。難問とされている海図の問題は3問中2問正解。2級は沿岸から20カイリまでだが、1級は外洋どこまででも行けるようだ。毎月1回位は練習のためにボートをレンタルしたいと思っている。

 
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