今月、行われた「東京レインボープライド」は、LGBT(性的少数者)が性的指向にかかわらず、差別や偏見にさらされることのない社会の実現を目指すことを訴えるイベントだ。

リビンマガジンBiz編集部もイベントに参加し、住生活に関する不公平についてアンケート調査を行った。

中でも、複数の人から聞こえたのが、住宅ローンを組む際の不利益だ。いったいどんな不利益があるのだろうか。

住宅ローンに詳しいN&Bファイナンシャル・コンサルティング 丸尾健代表に聞いた。

(リビンマガジンBiz編集部)

(画像=写真ACより) 

※本画像に写っている人物のセクシャリティは本文と関係ございません

LGBTの住宅ローンを組む際にこうむる不利益の代表的なものは、法的な婚姻関係を結べないことに起因することがほとんどです。そこに言及する前に、一般的な住宅ローンの種類について解説します。

通常住宅ローンを組む場合には、債務者になる方は3種類の方法があります。

  • ・単独のローン・・・主債務者が1名でローンを組む。
  • ・ペアローン ・・・1つの物件に対して2名がそれぞれローンを組む
  • ・収入合算  ・・・1つの物件に対して、ローンを組む人(主債務者)は1名だが その方の収入を補う形でローンを組む ペアローンと収入合算は似ているようにも見えますが、いくつか違いがあります。

■ペアローン

  • ・お互いが連帯債務者になる。
  • ・それぞれのローン分が団体信用生命保険対象になる。
  • ・それぞれのローン分が住宅ローン減税対象になる。

■収入合算

  • ・合算者が連帯保証人になる。
  • ・一般的には、主債務者のみが団体信用生命保険対象になる。
  • ・主債務者のみが住宅ローン減税対象になる。(分けられるケースもあります)

LGBTの方が単独で住宅ローンを組み、その後にパートナーが同居するのであれば、ローンの審査にさえ通過すれば、なんら問題ありません。 問題となるのは、1人では住宅ローンの借入希望の金額に届かず、ペアローンもしくは収入合算で住宅ローンを組みたいというケースになります。

LGBTカップルはペアローンや収入合算で住宅ローンが組める?

私は住宅ローン相談を1000件以上経験してきました。その中には、LGBTの方の単独ローンの新規と借換えをお手伝いした経験もあります。

しかし、ペアローンと収入合算についてのご相談はこれまで承ったことはなかったので、この機会に複数社の金融機関にヒアリングを行ってみました。

結果は下記のような回答でした。

  • ■メガバンク・・・ペアローン・収入合算、どちらも夫婦もしくは親子でなければNG。
  • ■大手地銀・・・
  • ■信金・・・兄弟までなら可能性あり。いわゆる戸籍上の他人は難しい。

残念ながら予想通りでした。 一般には兄弟や義理の兄弟で、ペアローン・収入合算もややハードルが高いという状況なので、戸籍上のつながりのない方2人の住宅ローンはやはり、現時点では難しい状況であることは間違いないようです。

そうなると、2人の収入を合計して返済していこうと考えているカップルでも、どちらか1人が大きなローンを組むことになります。

選択肢としては、審査金利の基準が実行金利のままで、一番大きな借入ができるフラット35があります。比較検討するうえでは、筆頭に上がってくる住宅ローンではないでしょうか。

LGBTの住宅購入。心配事はローンだけではない?

私が以前、借換え相談を行ったLGBTのお客様は、幸い単独でも十分なご収入があり、無事に借換えができました。

しかし、心配事は別のところにありました。 それは、「もし、自分に万が一のことがあった場合、パートナーはこの家に住み続けることができるのであろうか?」ということです。

通常、住宅ローンの債務者に万が一のことがあると、団体信用生命保険の適用になり、住宅ローンはすべて保険で返済されます。

しかし、遺言等が無い場合にはご両親やご兄弟が法定相続人となり、パートナーは法定相続人にはなれません。

つまり、家は他の方の所有に変わってしまうのです。 そうなってしまうと、パートナーが継続して住み続けることができるのか否かという部分が最大の関心事になるのでした。

この方は、ご兄弟には、ご自身がLGBTであることを伝えているものの、ご両親にはまだ伝えられていないという状況でした。

そこで提示した対応策は下記のようなことでした。

  1. 1.遺言書を残す。
  2. 2.生命保険をかけ、受け取り人をご理解のある兄弟を指定。そのうえで、遺言書で生命保険の保険金の受け取り人をパートナーに指定。保険証券等はパートナーがわかるところに保管。遺留分の減殺請求を受けた場合はその保険金で支払い。
  3. 3.パートナーに生前贈与をして、ある程度を資産移転しておく。

今回のケースではご相談者の収入が高く、パートナーの方はアルバイト程度の収入しかなかったので、上記のようなアドバイスをしました。

しかし、末永くパートナーの方と過ごせるならば良いのですが、途中でパートナーを解消するケースも出てくると思います。

そのようなときにも、柔軟に対応できる方法を検討することも必要だと思います。 LGBT向けのパートナー制度のモデルケースとされている渋谷区の条例では、LGBTカップルを結婚相当と認めるための要件については記述されていますが、それを解消する場合については規定されていないようです。

いずれにしても、FP・税理士・弁護士等、専門家に相談して、しっかりと検討の上、ご安心のできる計画を立てることが、重要になってくるでしょう。

 
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