2017年06月30日
正田きよ子

今や絶滅寸前?かつては憧れた「団地族」。公団が残したもの

正田きよ子

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ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』が静かな感動を呼んでいる。
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの片隅の平屋に住む、建築士の津端修一さんと妻・英子さんの長年連れ添った夫婦の仲睦まじい生活を描いた作品だ。かつて、津端さんは日本住宅公団を代表する建築士だった。阿佐ヶ谷住宅や多摩平・高根台団地をはじめとする多くの団地の設計や都市計画に携わった。自然との共生を目指したニュータウン計画だったが、経済成長の波はそれを許さず、無機質な大規模な団地が完成する。仕事から距離を置いた津端さんは、自らが手掛けた高蔵寺ニュータウンの土地を購入し、生活を始める―。
今年1月の封切から、順次全国公開をされている。

日本住宅公団(現:都市再生機構)が設立して今年で62年、今振り返ってみて日本住宅公団が残したものとは何だったのだろうか。ファイナンシャル・プランナー正田きよ子氏に聞いた。




団地 (画像=写真AC)



高度経済成長期を担った団地


日本住宅公団(2004年より都市再生機構)は、第二次世界大戦後の住宅不足を緩和する目的で、1955年(昭和30)に設立しました。

日本住宅公団が建設した鉄筋コンクリートの集合住宅(団地)の多くは、6畳と4畳半にダイニングキッチンの2DKで、広さは40㎡代。食事する部屋と寝る部屋を分ける「食寝分離」の考えは、合理的かつ画期的なものでした。当時の一般庶民の暮らしは、ちゃぶ台でご飯を食べ、それを片付けて布団を敷いて寝る、というひと間で生活するスタイルでした。
また、ダイニングキッチンやダイニングテーブルといった設備や家具は、それまでの生活スタイルを一新しました。団地はあこがれの住まいとなったのでした。
昭和30年~40年代の高度経済成長期は、あこがれの団地の公募に、何十回も応募する人が続出するほど、人気は加速していきます。それに伴い、団地の開発もさらに進みました。住宅供給量の拡大が優先され、広い土地を求めて、団地はより駅から遠い場所に建設されていきました。緑も多く、子育てによい環境だったようです。


住民の高齢化、高齢者の買い物難民

昭和35年ごろになると、「団地族」といった言葉が登場し、世間一般にもその生活様式が認知されていきました。しかし、世帯年収が上昇する時代が終わったころや、女性の社会進出の活発化により、共働き家庭が増えていきます。そういった生活スタイルの変化の中で、郊外の駅から遠い団地住まいでは、不便になっていきました。


より職場に近い場所への住まいを求めて、新たな子育て世代は都市部に集中し、既存の入居者の子どもが成長し独立する「世帯分離」が発生しました。同世代の入居者が多い団地は、住民の高齢化とともにドーナツ化現象が顕著になり、次第に住民は減少していきました。
なかには、住民の減少により団地周辺の商業施設が撤退し、バスや徒歩で時間をかけて買い物に行く事態も発生しています。団地は、丘陵地帯を開発したところが多く、高齢者は買い物に行くのが困難になってきています。
平成25年経産省は、高齢者が暮らす大規模団地や過疎地において、流通機能や交通網の弱体化に伴った「買い物難民」が700万人程度存在していると推計しています。

職場から遠くて、買い物にも不便と負のループで、若い世代から敬遠され、さらに高齢化が進んでいったのでした。郊外のニュータウンは、ゴーストタウン化しかねない状況へ。高度経済成長のただ中でとにかく量を供給し続けたことの失敗です。

また、都市再生機構は、75万戸もの団地の建設費を、有利子負債によって賄っていました。その額は11兆円にも上ります。負債総額は年々削減していますが、今後の人口減少や空き家の増加が明白である状況では、果たして完済できるかの疑問も残ります。

私の周りでも、郊外のニュータウンから都心に引っ越してこられた方がいらっしゃいます。子育ての時期は、住民とのコミュニティがある団地生活をされていました。子どもたちが独立後は、生活の利便性を考えて夫婦二人の生活を職場が近いところに住まいを構えて生活されています。団地には、そこに住み続ける「理由」がなくなってしまったのかもしれません。



(画像=写真AC)



これからの団地

私は「団地は狭くて不便」「住むのがあこがれだったなんて信じられない」と思っていました。ところが近年、そんなイメージを払拭する、素敵なリノベーション物件が登場しています。

都市再生機構の賃貸住宅(UR賃貸住宅)は、無印良品と連携したリノベーションプロジェクトを行っています。
【MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト】
https://www.ur-net.go.jp/chintai/muji/
細かな部屋で区切られていた間取りを大きな空間に変更し、スタイリッシュな部屋に生まれ変わっています。物件の築年数は古いので、家賃は抑え目に設定されているのもうれしいですね。このサイトを見て、どう思われましたか?私は、こんな団地なら住んでみたいと思いました。
今、私が思う団地の良さは、広大な敷地に建ち、緑が豊富なこと。ネットで買い物をする世代であれば、周辺に商業施設がないのはあまり気にならないのではないでしょうか。駅から遠く少々不便であったとしても、緑が豊富で素敵にリノベーションされたお部屋にこの家賃で住めるのなら、と思うのは私だけではないでしょう。
団地には集会所があったり、住民同士のお付き合いがあったりと、核家族でご近所づきあい不在だった人には、それも新鮮な経験ではと思います。

かつての団地が食寝分離という新しい生活スタイルを提案したように、今の団地は、古いところで素敵に住むという新たな提案、挑戦をし続けています。
日本は、少子高齢化、人口減少が進んでいます。空き家問題も深刻です。住宅不足の緩和のために生まれた団地は、大規模開発で新たなものを作り続ける役目を終え、今ある資源の有効活用として舵を切り出しているのです。


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