2021年04月06日
南智仁 賃貸仲介の視点

「不動産ポータルサイトのリンク沼」ハマったら、まあまあのカオスだった話

南智仁 賃貸仲介の視点

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賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)



画像=ぱくたそ



ミュニケーションを求めない内見客


賃貸仲介の営業では、内見する物件が1件だけというケースは、とても少ない。そして、言うまでもなく、複数の物件を内見してもらったほうが成約率は高まる。現地で待ち合わせして、わずか5分程度で内見が終了し、会話も深まらないまま解散、というのは、正直、なんともいえない徒労感を覚える。


もうちょっと「接客」のスキルを学ぶべきかと悩む若手営業社員は多い。しかし、実際のところ、あまり営業社員と積極的にコミュニケーションを取りたくないというお客さんも増えてきたような気がする。自分の気になる物件だけを内見し、さっさと申込の可否の判断をしたい、というのは、正直な顧客心理でもある。では、お客さんが問い合わせした物件1件のみを内見をして、それがキチンと成約に結び付くかと言えば、前述したように、決してそうではないのが興味深いところだ。特にお客さん自身の希望条件が「ユルイ」状態だと、成約率が限りなく低くなってしまう。


では、お客さんの条件が「ユルイ」とは、どういうことだろうか?

たとえば、「入居の時期」がまだ全く定まっていないお客さんがそうだ。極端な例だと、半年以上先の引っ越し希望なのに、急いで内見希望をされるケース。また、「風呂トイレ別」が必須条件なのに、「3点ユニットバス」の内見を希望するお客さん。こういった、「ほぼ確実に申し込みされないだろうな。。」というお客さんの問い合わせが、多い。特に最近は、このような問い合わせが増加している、ような気がする。


こうしたお客さんに対し、希望条件をしっかりとヒアリングし、最適な提案を行うのが、賃貸不動産会社の営業メンバーの仕事だろう。


また成約率を高めるために、賃貸仲介会社では、よく「問い合わせ以外の気になる物件」のリンクを送って頂くようお客さんに依頼するケースがある。これは、他社にお客さんが流れないように、またお客さんの気になる物件や傾向を知るためにも、かなり効果的な手法である。お客さんからすれば、複数社の不動産会社に問い合わせをする面倒さが軽減できるし、何より内見になった際に、一社でまとめて内見もできる。


しかし、この「気になる物件のリンクを教えて頂く」という依頼に思わぬ落とし穴(というか沼)があった事例がある。



画像=ぱくたそ



り続けるLINEの恐怖


一年ほど前に、20代の賃貸仲介営業メンバーが、お客さんの対応をした時の話だ。当時は、コロナの影響もなく、店舗のカウンターで相対し、接客を行った。お客さんは、20代後半の女性会社員。住んでいる部屋で、近隣とトラブルがあったようで、少し急ぎのお引越しを検討されていたようだ。早速、受付を済ませ、条件をヒアリングしていくと、このお客さんの希望エリアが、ほぼ全く「固まっていない」状態だったことに営業メンバーは気がついた。


若者に人気のある駅が良い、と言ったかと思えば、そのエリアから遠く離れた下町の駅も良いかも、はたまたかなり都心部から離れた駅も気になる、と言う。お客さんの話を聞きながら、営業メンバーは、「これは、今日は申し込みされないな。。」という結論に至った。


彼は、「一旦、条件を整理してみましょう。また、せっかくなのでポータルサイトで気になる物件があれば、リンクを教えてください。私がまとめて空室情報をお調べしますし、内見もさせて頂きます」と提案し、この日はそのお客さんと別れた。


これだけ見ると、不動産仲介の現場でよくある話。「ユルイ」条件なので、それを固めてほしいと依頼をした。また他に気になる物件をお知らせしてもらって、お客さんの希望条件を固めながら、他社に行かないような手も打つ。何も落ち度はないような気がする。しかし、その2日後から彼は、予期せぬことに襲われてしまう。


2日後の日中、そのお客さんから営業メンバーの会社用のLINEに3件程度、ポータルサイトの物件ページのリンクが送られてきた。ページを開いてみると、前回お客さんが言っていた気になるエリアとは全く異なる物件だった。そのメンバーは、何の気なしに、「あぁ、また他のエリアを検討されているんだな」と思い、通常通り、空室を確認し、内見の可否をお客さんに返信した。


その日の夜、終業後にまた彼のLINEの通知音がした。開いてみると、今度は10件程度の物件情報のリンクが貼られていた。思わず彼は目を見開いたが、終業後だったので、「ありがとうございます。明日お調べ致します」と返信し、その日は就寝した。


次の日の朝、起きてLINEを開くと、また同様のお客さんから、10件程度のリンクが送られていた。彼は出社して、その大量のリンクの空室確認、内見可否を調べ、図面を取り寄せ、お客さんに添付送信した。物件情報の確認も、数十件になると、これはかなりの作業量になる。


その後もほぼ1日3回、一度におよそ10件程度の物件情報が送られてくるようになった。営業メンバーは、流石に、お客さんに対し「申し訳ありませんが、一度条件を整理しませんか?」とLINEを送った。お客さんからの返答は、「そうですね、わかりました!!」という元気な返信。しかし、その夜、さらに倍のリンクが送られてくるようになった。営業メンバーは、途方にくれ、上司に相談した。


このお客さんにとっては、おそらくポータルサイトで物件を見ることは、日常的な習慣なのだろう。しかし、その確認依頼の件数が膨大であると、不動産会社の業務として、かなり負荷がかかる。とはいえ当然、お客さんにとっては、このようなことは知ったことではない。このあたりの感覚の違いが今回の原因のひとつだろう。


また、最初の接客の段階で、エリアをしっかりと固めていなかったこの営業メンバーにも原因があるかもしれない。しっかりと予算をヒアリングし、そしてエリアを提案し、条件を固めれば、このようなカオスの状況に陥っていなかったのではないだろうか。少なくとも、例えば2つのエリア程度の決められた条件の物件であれば、そこまで大量の物件数にはならない。


お客さんから気になる物件情報のリンクを取得するのは、とても効果的である。しかし、それ以前に、しっかりと条件をヒアリングし、そして提案し、「ユルイ条件」を「固めること」を忘れてはならない。リンクの沼にはまらないように、是非気をつけてほしい。

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