溢れる法人設立のワード

 昨今、不動産の売却でも賃貸経営でも、至る場面で法人設立・法人化という単語を目にしますよね。
 現に、法人設立のイロハを解説した書籍やネットの記事等は数多く、また実際に設立を手助けして下さる専門家の方の解説や紹介ページ等も多く見かけます。
 法人設立を考える大半の方の目的は「節税」すなわち法人を通じた税金対策、といっても過言ではないでしょう。
 もっとも、最近では、この法人の節税効果の部分に注目が集まるあまり、法人が何のために存在しどんな社会的役割を担うのかの点はそれほど気に掛けられていない、という印象を受けます。
 でも、せっかく手間ヒマあるいはお金を掛けて世の中に生まれてきた法人が、節税の事務処理技術というだけの扱いだったら・・と考えるとすこし空疎で寂しいですよね。

 そこで、ここでは法人設立を考える前に“法人ってそもそもどんな存在?”というテーマを、法人の代表例である株式会社の資本金を通じて考えていきます。

資本金返して!・・え?

 Q 「自分で設立した株式会社にお金を貸付けた扱いになっているので、資本金と一緒に返してもらいたいのですが・・」
  よく耳にする質問です。いや、本当これまで2,3回はこんな場面がありました。
  説明のためのイメージの一環として私が良く引用するのは、こんな例えです。
   “その法人はあなたの生み出したあなたではない別の人”です。
   “資本金はその別の人の体の一部つまり血であり肉でもある”わけです。
 A 「なので、資本金を返して、というのは簡単にはできません。」


  すると、ここで質問した方にさらなる疑問が生じます。
 Q 「それじゃあ、資本金って引き出せないことになるの?」
  と、大抵つぎにこのように尋ねられます。
 A  「そんなことはありません。事業を運営するためになら引き出せるのです」

  この段階で、ようやく法人である会社と個人が別の人格で、全く別の経済活動をする存在である、というイメージが浸透してきているようです。

  ここまできて、根本の疑問にたどり着きます。
 Q 「そもそも別人であるならば、どうして法人が個人の税金対策につながるの?」
  当然の疑問ですよね。私も知識がなければ全く同じことを尋ねるでしょう。

 A 「それはあなた御自身(個人)が、その別人である株式会社の取締役・株主等となって会社の収入を(報酬・配当等を通じて)個人の所得へと落とし込むことが可能になるからなんですよ。その過程で節税等のメカニズムを実現するのが法人ですね。」



 いかがですか?法人とはあなたの生み出したあなたではない別の社会的存在・・っていう表現はイメージいただけましたでしょうか?
 一定の法的スキルを習得された方であれば、取り立ててどうと言うこともない当然の話ばかりなのですが、一般の方に一連の流れを法律用語だけを用いて説明するとすれば、混乱が起きるのかもしれません。

 こうして株式会社の資本金を通じて法人を考えるのは良い一例といえますが、法人の運営・活動面から光を当てることでも新たな法人の側面が見えてくるでしょう。
 次回、運営編にてご紹介させていただきたいと思います。

 
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