賃貸事業としての割り切り

 

 まず考慮すべき事項は、賃貸併用住宅は、マイホーム取得と同時に賃貸事業を開始する、という点です。

これは純粋にマイホームを一軒取得した場合とはやや趣を異にし、物件の大家としての心の備えが必要になることを意味します。
 特に賃貸併用住宅では、同じ敷地・同じ建物の中に入居者がいる状態こそが通常なのですから、生活をしていく上でお互いに不用意な摩擦や衝突を生じさせないような心構えや工夫が求められるわけです。
 その意味で、ここは“事業としての割り切り”が必要である、ということができます。

    

不動産投資の効果は大きくない

 

 賃貸併用住宅の場合には、スタンダードな不動産投資と比較すると利回りは低く、投資の効果は一般的に低い水準にとどまります。
これは、元々延床面積の半数以上を自宅が占める上に、賃貸領域がある分だけ設備の規模が大きくなり、それだけ総工費や取得費用も高くなるという関係が生じることから、むしろ当然の事柄といえるでしょう。
 この点から返済額を考えると、キャッシュフローの積み上がりはそれほど期待できない、といえるでしょう。ただ、賃貸併用住宅の当初の目的である“マイホームを取得しながらもローン返済の軽減”という点を思い起こせば、ここでも割り切りが必要なのかもしれません。

空室リスクに備える

 経済的な面で最も留意すべきポイントとしては“空室のリスク”が挙げられます。
これは賃貸経営にはいわばつきものですから、賃貸併用住宅もこの例外ではありません。そして空室を100%防止することは不可能である以上、大切なのはこの空室リスクにどう備えておくかなのです。
 簡単にいえば入居者との良好な関係を保ちつつ、いざという時のための手当を施す、ということに尽きるでしょう。方法は様々考えられますが、キャッシュフローあるいは月々の返済で軽減できた分を取り分けて積み立てて置くことも必要でしょうし、こまめなメンテナンスを通じて、物件のコンデションを保ち快適な居住空間を維持する等の工夫も求められると思われます。
 また、コストによっては家賃保証を付けておくことも一つの方策といえるでしょう。

一石二鳥をどっちつかずにしないために

 

 以上の点から、前稿から紹介してきた賃貸併用住宅による一石二鳥の実現も、結局のところ本稿で取り上げた賃貸事業(大家)としての心の備えと、賃貸経営者としての経済的な備えの二つがあってこそ成り立つといって良いかもしれません。
 どちらも適度にこなすことによって、当初の自らのライフプランとうまく調和させて行くことができるからです。

 もともと賃貸併用住宅は“生活と投資の両立”という本来異質なモノ同士を組み合わせて、一石二鳥の効果を導いてきた以上、細かくみればやりにくい点があることも事実です。  

 ただ、様々なメリットを考えると有用なシステムであることは確かですから、より多くの方がその利点を存分に活かしつつ、住居としても事業としても適度な舵取りにより最大の効果を手にすることが望ましいといえるでしょう。

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ