不動産投資と初期費用

 

 不動産投資を行う場合、売却によるキャピタルゲインを狙う場合でも、所有・賃貸を通じてインカムゲインを狙う場合でも、初期投資費用のうち購入価格をいくらで収めるかという判断は不可欠です。
 前者では売却差益を算出する基準になり、後者では利回り判定の基準になるからです。
 “良いものを出来るだけ安価に”は、どんな品物を購入する際にも妥当する原則ですが、今回は不動産の取得方法の一つとして任意売却という方法を紹介します。

   

任意売却とは

 任意売却とは、通常の不動産売却によってもそのローンが完済できないという場合に、債務者(売主)と債権者(抵当権者、主として銀行)の間で話し合い合意することで、不動産競売手続を経ずに第三者(買主)に売却する取引を成立させる仕組み、をいいます。
 ローンの返済が不可能もしくは困難という場合、債権者は通常その担保とする不動産自体を競売・換価することで債権の満足を得られますが、競売を行っても得られる金額は市場価格より2、3割は低くなるのが実情といわれています。
 そこで、完済までは届かないにしても、できるだけ高い金額で売却を行いたい債務者と債権者の双方が納得の行く価格で売却を行うことで、ローン残高の充当(債権者)、同返済(債務者)の希望ラインに近づけることが可能になります。
 また、このような構造から、任意売却での取引価格は競売価格よりも高く、市場価格よりも安価になる傾向があることから、比較的早期に買い手の出現が見込まれ、手続きを早めに完結させることが期待できます。
 
 なお、不動産の売却行為は、どれも売買契約(民法555条)という任意で行われているはずであるのに、「任意売却」という用語が用いられるのは、この仕組みが債務名義に基づく競売手続(強制競売等の手続)の概念に対するものであるから、と考えられます。

任意売却の効果

 それでは、任意売却後の効果として、その後の処理はどうなるでしょうか。
 まず債権者は、抵当権者として任意売却により買主が支払う代金をローン残金に優先的に充当しますが、不足分は無担保の債権として残ります。それでも、抵当権抹消に応じる価値があるのは、上述のようにできるだけ高い金額の債権回収が可能になるからです。
 他方、債務者も充当後の残金の支払いを免れるわけではなく、無担保になったとはいえ支払い義務は継続し、今後、他の一般財産に対して差押え等を受ける可能性は残ります。
 そして、買主は任意売却にあたり通常、代金の支払と引き換えに債権者に抵当権抹消の手続きをとってもらうことで、通常の不動産の購入と同様に何ら制限のない物件を取得することができます。

 以上が、任意売却とその仕組みについての簡単なご紹介です。
 次稿では、この任意売却の利用方法、及び注意点等について採り上げていきたいと思います。
 

 
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