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2018年6月に施行される方針が固まった「民泊新法」ですが、業界によってはそれを好ましく思っていない人々がいるようです。(リビンマガジンBiz編集部)


(画像=写真AC)

8月29日、共同通信によると、観光庁が一般住宅に宿泊客を有料で泊める「民泊」の営業ルールを定めた「住宅宿泊事業法(民泊新法)」を来年2018年6月に施行する方針を固めました。今年6月9日に法律が成立したものの、「1年以内に施行」とされていた住宅宿泊事業法。住宅宿泊事業の届出や住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者の登録は、施行の3カ月前から受け付けが開始される予定で、来春頃から参入を考える各事業者が一斉に動き出すこととなりそうです。

住宅宿泊事業の制度がスタートすると、全国的に年間180日以内の民泊が解禁されることになります。しかし、営業日数については各自治体が条例により短縮することができます。私の耳にも、東京都内の各区から民泊を検討会議の話が入ってきます。自分たちの地域がどのように民泊を進めていくか、今後は各自治体で議論が行われ、条例案を検討することになります。

先週、出張してきた北海道では、8月30日に独自の条例案を議論する有識者会議の初会合が札幌市で開かれたと聞きました。観光都市である札幌市は、旅館業の許可要件が厳しく、既存住宅を活用して営業許可を得るのが難しいエリアの1つでした。今後、新法の成立をどのようにとらえていくのでしょうか。有識者会議によると、別荘地では閑静な環境を守るためゴールデンウイークや夏休みの民泊営業を制限することが検討されるそうですが、大型連休など宿泊ニーズの高い時期の営業制限は、事業者にとっては痛手となるかもしれません。

ホテル・旅館の業界団体は、住宅宿泊事業法に対抗する姿勢を見せています。「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会」は、8月23・24日に「常務理事(各県理事長)・理事合同研修会」を開き、住宅宿泊事業法へ対応として民泊営業日数を180日より更に制限するなどの条例の制定を自治体に要請するための陳情活動を行う方針を固めました。


(画像=写真AC)

また、京都では「一般社団法人京都簡易宿所・民泊協会」が設立され、今後、京都府・市内の優良な事業者による相互交流や情報交換を行うことや、違法民泊の排除をめざして活動する予定です。

8月29日、国土交通省は住宅宿泊事業法(民泊新法)が来年6月に施行されることを踏まえ、「マンション標準管理規約」の見直しを行い、専有部分の用途を定める第12条を改正。宿泊を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を追加しました。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html

これを受け、東京都台東区では翌8月30日から、区のホームページ上で分譲マンション管理組合向けの「マンション標準管理規約」の改正を促す案内を行っています。
http://www.city.taito.lg.jp/index/kurashi/jutaku/bunjo/20170824140553763.html

また、区の支援制度としてマンション管理士など、専門家のアドバイスを受けることもできるそうです。


住宅宿泊事業法施行を見据え、民泊事業を検討する事業者、対抗するホテル事業者、地域住民の生活を考える行政の三者三様の動きに今後も注目していきたいと思います。

 
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