隔週月曜配信「石井くるみの 民泊最前線」


カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。


深刻化するシェアハウス問題を「民泊」で解決できるのかを5回にわたって解説します。第1回目は、シェアハウスと民泊を比較します。(リビンマガジンBiz編集部)

(画像提供=写真AC)

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」で知られるスマートデイズ(東京都中央区)が、物件所有者への賃料の支払を突然停止したことで、シェアハウスのサブリース契約問題が表面化しました。一部のシェアハウス運営会社が、サブリース契約によって長期の家賃保証をうたい、市場水準よりも高い価格でシェアハウス物件を販売しました。しかし、実際には入居者が埋まらない状況が続き、そもそも最初から長期の家賃保証が成立しないビジネスモデルだったのではないか、との声も聞かれます。

悩みを抱えるのが、毎月の賃料収入よりも多額な借金返済を迫られる可能性のあるオーナーです。借入金の返済を続けるためには、借入先の銀行との返済条件の交渉や、物件運営方法の見直し等による、キャッシュ・フローの改善が重要となります。

最近では私の事務所にも、東京郊外の「既存のシェアハウスを民泊(簡易宿所)として活用できないか」という相談が寄せられています。

本稿では、物件から得られるキャッシュ・フロー改善策の1つとして、シェアハウスを「民泊」として活用することができるかを、法律的・技術的な観点から全5回にわたって解説します。

第1回 シェアハウスで民泊は経営できるのか?

第2回 シェアハウス簡易宿所化の可否を分ける「用途地域」と「窓先空地」

第3回 シェアハウス簡易宿所化に要するコスト①…用途変更の建築確認申請

第4回 シェアハウス簡易宿所化に要するコスト②…トイレ等の増設と消防用設備の設置

第5回 シェアハウスにおける住宅宿泊事業(民泊新法)の活用

シェアハウスを宿泊所にするには

シェアハウスには、法律上の定義はありません。個々の賃借人が賃貸借契約を締結します。寝室は単独で使用するものの、 キッチン、リビング、風呂、トイレ等は他の賃借人と共同で使用する住宅が一般的です。

シェアハウスは賃貸借契約期間が1カ月以上になっており、旅館業法は適用されません。シェアハウスの建築基準法上の取り扱いは、特殊建築物である「寄宿舎」となります。ここ数年で多く新築された物件は、寄宿舎として建築基準法令に適合して建築されています。

シェアハウスを1日単位で貸し出すためには、原則として旅館業法の許可を受けなければなりません。風呂やトイレを他人と共用するシェアハウスを合法的な民泊とするには、旅館業法の営業種別のうち、多数人共用の構造設備を設けることとされる「簡易宿所営業」の許可を受けることが、最も有力な選択肢となります。

シェアハウスを簡易宿所とするためには、旅館業法に加え、建築基準法、都市計画法、消防法といった各規制のハードルをクリアする必要があります。

・シェアハウスを簡易宿所にするとき考えられるハードル

旅館業法:トイレや浴室などの水回りの不足やフロント設置、

建築基準法:用途変更の確認申請や東京都安全条例にもとづく制限、

消防法:自動火災報知設備

これらのハードルをクリアできない、またはクリアするために多大なコストが発生する場合には、年間180日の営業制限はあるものの、簡易宿所よりも低コストで民泊を営むことができる、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく「住宅宿泊事業」の活用を検討します。

次回は、シェアハウスの簡易宿所への転用の可否を分ける、都市計画法における用途地域の規制と、建築基準法における窓先空地の規制を解説します。

図表:シェアハウスと民泊の比較

比 較 項 目

シェアハウス

民泊(住宅宿泊事業)

民泊(簡易宿所)

住宅提供期間

1ヶ月以上

1日単位

1ヶ月未満)

1日単位

1ヶ月未満)

民泊の営業制限

180日まで

制限なし

旅館業法

適用なし

適用除外

適用あり

建築基準法上の用途

寄宿舎

簡易宿所

(旅館・ホテル扱い)

 用途地域

住居専用地域でも可

住居専用地域は不可

 窓先空地(東京都)

緩和規定あり

緩和規定なし

消防法施行令別表

第一の用途

5項ロ

5項イ

(旅館・ホテル扱い)

 
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