石井くるみの民泊最前線

カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。

観光客が増えたことで市民生活に支障がおこしていますオーバーツーリズム。今回から複数回にわたってオーバーツーリズムについて解説します。(リビンマガジンBiz編集部)

持続可能な観光立国に向けて、オーバーツーリズムを考える①

~距離が縮まる「旅行」と「暮らし」~

画像=PIXABAY

2003年以降、政府は「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を基本理念として観光立国に取り組みを本格的に開始し、日本の観光政策は順調に進展を遂げています。とりわけ、2012年以降、訪日外国人旅行者数は右肩上がりに伸び続け、2018年にはついに3,000 万人を超えました。

2020年には訪日外国人旅行者数を4,000万人、2030年には6,000万人まで増加させる等の目標を政府は掲げており、引き続き積極的に観光政策に取り組んでいくこととしています。私のクライアントである宿泊事業者からも、ぼちぼち来年のオリンピックの宿泊予約が入りはじめたと聞いています。

 

しかし、他方では、こうした訪日外国人旅行者の急増を背景に、一部の観光地において地域住民や旅行者の間で、旅行者による混雑やマナー違反などの課題への関心が高まっています。旅行者が多すぎて道路が混雑している、バスや電車に乗り込む余裕がない、ごみやたばこのポイ捨てが増えたなどなど、いわゆる「オーバーツーリズム」に関連する報道がしばしば見受けられるようになってきました。

普段の生活とは違う非日常感と異文化交流こそ、海外旅行の醍醐味といえますが、旅行者が増えるほどに、生活文化・習慣の違いや相互理解の不足を背景とした旅行者と地域住民との摩擦も生じやすくなります。

特に近年は、「民泊」という宿泊のスタイルが世界的に広がっており、観光そのもの質が変化しています。従来、観光旅行といえば、ツアー旅行に代表されるように名所旧跡をめぐり、ホテルに宿泊する、というスタイルが一般的で、良くも悪くも地域住民の日常生活とはある程度分断されていました。ところが、近年は「地域文化」や「住民の生活」そのものが観光資源ともなり、旅行先で日常的な生活文化を体験するスタイルが人気を集め浸透しています。

私の行政書士事務所においても、ここ数年で民泊・旅館業に関する申請の相談が急増しました。新しい不動産投資・活用の1つとして定着した民泊ビジネスは、従来は皆無のまったく新しいビジネスと言えるでしょう。

したがって、行政手続きも、大規模なホテル開発を想定した内容となっており、小規模な住宅を改装したスタイルでの許可申請は困難でした。このような小規模施設においても旅館業申請が可能となるよう、条例改正では構造設備要件の見直しが行われると同時に、近隣住民とのトラブルを未然防止するような手続きが設けられるようになりました。

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