シンプル且つ機能的なデザインが特徴で、家具や小物に始まり衣料品・食料品までも取り扱う【無印良品】。個人消費が伸び悩む中、2017年2月期第3四半期決算で4期連続の最高益更新となったことで大いに注目されています。そんな無印良品が、UR都市機構とのコラボ『MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト』での、全国8団地・12プランの入居募集申込受付を2017年1月21日(土)から全国一斉開始することを発表しました。

『MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト』とは何者?

そもそも『MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトとはどのようなプロジェクトなのでしょうか?このプロジェクトのキャッチコピーは『団地が理想の家になる』。月日が経ち建物は老朽化し、団地に住む人は少なくなってきました。そこで、団地の良さを改めて見直すことで初めて見えてくる団地の優れている部分があります。その優れたポイントを最大限に生かすために、無印良品が長年積み重ねてきた独自の視点からのアイディアや工夫を加え、これまでになかった新しいタイプの『団地』をつくろうというプロジェクトです。

確かに『団地』を改めてよく見てみると、私たちの住宅環境に比べてとても恵まれた敷地条件で建てられています。1棟1棟当たりの間隔が広く取られ、どの部屋も光がよく入り風も良く通ります。建物の間には小規模ながら公園が整備されており、一式の遊具が設置され緑もたくさんあります。また、団地によってはゆとりのある住戸も少なくありません。

無印良品は「団地について」アンケート調査を実施

無印良品は、2012年5月15日~5月22日の期間に「団地について」アンケート調査を実施しました。回答者総数は2,247人、「今までに団地に住んだことはあるのか?」「住んでいた(住んでいる)期間」「団地についての好感度」などについての質問をしました。

このアンケート調査の結果をまとめてみると、回答者の約半数の51%程の人が「現在、団地に住んでいる」もしくは「過去に団地に住んでいた」ことが分かりました。また残る約半数のうち41%もの人は「住んだことはないものの、訪問したり敷地内にある公園で遊んだことがある」と回答しました。つまり、回答者総数の9割の人が「団地」について具体的なイメージを持っているということを察することができます。

その他にも、賃貸では難しい「間取りの変更」に関心があるようです。この変更が可能であればと願う人が86%にものぼった。確かに長期で快適に住みたい人にとって、間取りを変更できる(自分で改装できる)ことは大きな魅力に感じるはずです。特に築年数の大きい団地では、キッチンやお風呂などといった設備関連の変更をしたい傾向にあるようです。

これらのアンケート調査の結果を受け、無印良品は『MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト』に大きな可能性を感じたのです。壊して一から新しいものを造るのではなく、住む人が快適に過ごせる理想の間取りにリノベーションすることで長く住み続ける。

そもそもが、優れた配棟計画・立地・環境に建っているのですから、残された問題を解決さえすれば寂びれた団地が再び輝くのは必然的です。

様々なリノベーションプラン

団地の間取り別に、様々なリノベーションプランが用意されています。そもそも『リノベーション』とは、住まいの間取りや設備などを改修し、住む人の目的やその時代にあった新しい価値を加えることです。簡単に言うと『壊して新しく作る』といったところです。

しかし『MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト』は少し違います。同じリノベーションでも、『全てを壊すのではなく、使えるものは残しておく』ことを基本としています。そこで『生かす、変える、自由にできる』の3つのテーマを掲げ、無印良品が長年培ってきたアイディアや工夫が散りばめられたプランを住む人に提案するのです。

では、テーマの一例をご紹介します。まずは『生かすところ』。主として全体の構造・柱・鴨居など、大きな空間を作る部分は可能な限りそのまま残されています。例えば「押入」。襖を取り払い、大きな収納の空間とした活用します。収納ボックスを並べたり、ハンガーパイプを取り付けて洋服をかけたり、はたまた椅子を置いてデスクにしたりと多様な使い方ができます。

次に『変えるところ』。ここは団地の魅力を一層引き立てるために様々なアイディアを取り入れたキッチン・床・仕切りなどが挙げられます。古い団地でよく見られる「壁付けキッチン」を対面式に変更したり、麦わらを床材に使用した「麦わらパネル」などが挙げられます。

最後に『自由にできるところ』は、ここがこのプロジェクトにおいて最も特徴的な部分かもしれません。住む人が自分の好みのスタイルで自由にアレンジできます。例えば「仕切り」。『変えるところ』にカテゴリーされる「小天井」にユニットシェルフを組み合わせることで、実用性までをも兼ねた間仕切りに変身します。地震などでの家具の転倒防止効果もあり、両側から使うことのできる便利さも兼ね揃えています。

その他にも、メゾネットタイプやシェアルームのリノベーションプランもあります。

すでに入居者がいるリノベ団地もある

実は今回が初募集のリノベ団地ではありません。時を遡り2012年の秋、大阪府府中市の『新千里西町』、大阪府堺市の『泉北茶山台二丁』、大阪府大阪市の『リバーサイドしろきた』の3団地5プランからスタートしました。それから徐々に数を増やし、今回で31団地35プランとなりました。

実際の入居者はどう感じているのか

古来からの無印ファンではなくとも、そのデザインなどに惹かれて入居を申し込んでいるので、全体的に満足度は高めです。特に「夏の涼しさ・自然光がよく入る」ことには、誰しもが口を揃えて評価しています。毎年猛暑が叫ばれる中、エアコンをつけなかったという人までもいます。

無論、100点満点の物件というわけではありません。夏が涼しいということは、冬は少々対策が必要なようです。また、基本的な部分が昔ながらの基準で造られている為、鴨居に頭をぶつけたり…洗面・浴室の広さを拡大できない…といった不満は残るようです。

また団地といえば階段がないことがよく挙げられますが、入居者からするとあまり大きな問題では内容です。むしろいい運動だととらえる人が多いようです。全体的に、賃料なども考えるとコストパフォーマンスがかなり高いと言えそうです。

今後の展開は?

今後はどうなっていくのでしょうか?ここ数年の間に『ミニマリスト』という言葉をよく耳にする様になりました。それと同時に「ミニマリストほどはないけれども、シンプルに生活したい」と願う人は少なくないようです。古来からの無印ファンはもちろんのこと、そのシンプルさに新たにファンになる人も増えてくるでしょう。

また、2015年9月からはマンションのリノベーション事業も始めています。その名も『MUJI INFILL 0』。これは分譲マンションを対象としたリノベーションです。物件の条件にもよりますが、費用は70㎡前後で約600万円ほどです。現時点ではまだ東京中心の事業エリアではありますが、徐々に全国へと展開していくでしょう。

参考URL:

http://www.muji.net/ie/

http://www.muji.net/ie/mujiur/index.html

http://www.ur-net.go.jp/muji/

http://housevision.muji.com/minna/survey/survey03/3_05a

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ