今回は、前回の続き「人口減少下の不動産事情その3」と題し、郊外の戸建て住宅の現状についてお伝えしてまいります。


都心郊外のニュータウンの現状

団塊の世代」とは、通産(現経産省)官僚だった作家の堺屋太一さんの作品「団塊の世代」からきているのは有名な話です。

厚生労働省の定義によると、昭和22年から24年に生まれた第一次ベビーブームの世代をいい、現在70歳から68歳前後の方々をいうそうです。

この世代の年間出生数は260万人を超えています。去年2016年の出生数は98万人なのでその約2.7倍となるわけです。

この方々の現役時代は、まさしく高度経済成長真っ只中、サラリーも右肩上がりで、住宅ローンをしっかり組んで、首都圏郊外のニュータウンに一戸建てを建てるのが最大の夢でした。

今でいう多摩ニュータウンや千葉ニュータウンなど、鉄道の新路線を建設し、その沿線に住宅地を建て、東京のターミナルに通勤するというのがごく普通の考え方だったわけです。

しかし、時代は移り変わり、人口減少がこれから本格的になる時代、郊外にあるニュータウンの戸建てはどうなるのでしょうか。

特に郊外のニュータウンなどは、似た世代の世帯が入居したため、現状は高齢化が進み、時に空き家問題となり、住民や自治体の悩みの種となっています。これらの街は建設から30年~40年が進み、建物自体も傷みが目立つ時期になってきています。

団塊の世代たちの悲哀

現在、すでに現役を引退し、このようなニュータウンに住む段階世代の方々は、子供たちの独立などでライフスタイルの変化により、大きすぎる家を売却し、より便利な都心のマンションに住み替えを希望する方々が、大勢出てきています。

しかし、現状は、これらの一戸建てはなかなか売却できません。

それは、都心から遠く、周辺に買い物するスーパーなどがない、など生活する上で不便を感じることが多いからです。

これら郊外のニュータウンの人口が減ることで、街のさらなる高齢化と空き家化の進行が進み、また商業施設が閉鎖されるというスパイラルに陥ってしまうのです。

今、地方の各地域で起こっている限界集落の現状は、近い将来、東京近郊のニュータウンでも現実に起こりうる話となるでしょう。

こうした郊外の一戸建てが衰退していく理由の一つが、人々のライフスタイルの変化です。

1990年から2000年にかけて、共働き世帯と専業主婦世帯の数が逆転し、現状は共働き世代が1,100万世帯、専業主婦世帯が700万世帯と完全に逆転しています。

1997年の男女雇用機会均等法改正で、女性保護のために設けられていた時間外労働、休日勤務などの制約が撤廃されたころから、共働き世帯と専業主婦世帯が逆転したのです。

それが、現在の保育園不足問題へとつながっているのです。

このような状況では、子供を持つ世帯が郊外に家を買うというライフスタイルがそぐわないことは、明々白々なわけです。

さらに同じ1997年に大都市法が改正になり、都心部の容積率が大幅にアップし、高層マンションの建設に拍車がかかったのです。これにより郊外から都心へ人口の移動が促進されました。

時代の変化は、時に残酷な現実を我々に突き付けます。今後、郊外のニュータウンの高齢化と建物の老朽化が同時に進み、それらの物件を購入した世代の方々の悲哀がますます増大していくことになるのでしょうか。

 
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