契約はいつ、どのように成立するか

不動産の売買をはじめ、賃貸借や贈与など多くの契約は極論を言えば口約束、つまり当事者同士の世間話などにおいても成立する契約とされています。こういった契約を「諾成契約」と呼び、原則として申し込みと承諾の2つの意向が合致することによって成立する契約となります。例えば、売主の「売りたい」という申し込みと買主の「買おう」という承諾があって、不動産の売買契約が成立するという訳です。売買と同様に諾成契約であるものには、贈与や請負、委任などもあります。この他、契約に際して物品の受け渡しが必須である「要物契約」という契約形態もあります。例えば、使用貸借や質権設定などが要物契約となります。

不動産の売却(購入)契約の流れ

不動産の売買契約が申し込みと承諾によって成立するのは前項で述べた通りです。なお、申し込みとは「相手方の承諾と合致して、ある契約の成立を意図して為される内心の表示」であり、承諾とは「申し込みを受けた者が、申し込みの内容を承知した上で、申し込みをした者との間に契約を成立させるための内心の表示」と解されます。通常、こうしたことは例えば不動産会社の事務所で、買主と売主の両者が売買契約書に署名することをもって為されるため、深く考える必要はありません。しかし、もしあなたが売ろうとしている不動産を「買いたい」と”承諾”した者が同一の不動産会社に足を運ぶことのできない遠隔地に住んでいた場合はどうでしょうか。この場合、申し込みと承諾を同時期に行うことができないため、それぞれの行為の効力発生時期や効力継続期限を定める必要があります。民法などでは以下のようになっています。

1-1.申し込みの効力発生時期

これについては、不動産会社との媒介契約の締結時または広告などの開始時と解されるのが一般的なようです。もし特定の人間に対する申し込みであれば、民法の原則により相手方に到着した段階で有効となると考えられます。

1-2.申し込みの効力継続期限

承諾の表示をすることのできる期間を予め定めて申し込みを開始した場合、その期間は申し込みを撤回できないとされています。また、承諾の表示をすることのできる期間を定めずに申し込みを開始した場合でも、相当期間は申し込みを撤回できないとされています。

2-1.承諾の効力発生時期

承諾の表示は申し込みを行っている相手方、この場合は売主に対して承諾する旨の通知を”発信した”際に効力が生じると解されます。これは遠隔地とのやり取りの場合に、先に承諾の表示をした者が郵便状況などの都合によって不公平な扱いとなることの無いように定められています。

2-2.承諾の効力継続期限

承諾をもって契約は成立するため、期限はありません。

 
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