こんにちは。弁護士の大西敦です。

 

 借地権付きの建物を譲渡しようとする場合、建物所有者から地主との交渉、その法的手続について、相談を受けたり、依頼されることがあります。

 借地権付きの建物所有者は、建物を所有していることは言うまでもありませんが、土地についてはその所有者から借地権の設定を受けた上で建物を所有しています。仮に、借地権その他何らの利用権もない場合には、建物所有者はその建物を収去して土地を明け渡さなければなりません。
 したがって、借地権上の建物と、借地権はセットとして扱われ、建物を譲渡する場合には、借地権も一緒に譲渡されます。
 しかしながら、借地権を譲渡するためには、地主の承諾が必要です。地主の承諾がない場合には借地契約を解除されることになり、その結果として、土地の明渡しを余儀なくされることになってします。 

 従いまして、借地権付き建物を売却しようとする場合には、地主の承諾が必要です。
 もちろん、任意の交渉で承諾を得られればいいのですが、地主が応じない場合、承諾料で折り合いがつかない場合があります。

 

 このような場合に、借地権者は、借地権譲渡許可の申立てをして、裁判所が相当と認めた場合には、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます(借地借家法19条)。
 これは借地非訟事件の1つで、他の借地非訟事件としては、建物構造等に関する借地条件変更申立事件や増改築許可申立事件等があります。

 申立てがあった場合、裁判所は、借地条件(地代等)を変更するかどうか、承諾料を支払わせるかどうかといった付随的な問題と一緒に許可をするかどうかの判断をすることになります。
 
 一方、地主としては、譲渡許可の申立てがあった場合に、自らが建物及び借地権の譲渡を受ける旨の申立てをすることができます(借地借家法19条3項)。
 この場合、裁判所は、相当の対価を定めて、地主が譲渡を受ける旨の裁判をすることができます。

【借地借家法】
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第19条  借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2  裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3  第1項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
4  前項の申立ては、第1項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
5  第3項の裁判があった後は、第1項又は第3項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
6  裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項又は第3項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
7  前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第3項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

 
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