こんにちは。弁護士の大西敦です。

 不動産を購入する場合、賃借する場合、その判断において眺望が重視されることは珍しいことではありません。眺望とは、眺め、見晴らしのことを言います。

 見晴らしのいいマンションを購入した、居住していたにもかかわらず、近くにマンションが建設されたため、見晴らしが悪くなったといったことはよくある問題です。

 眺望を遮るような建物が建設された、建設が予定されているといった場合、取り得る法的手段としては、損害賠償請求、建築の差し止め、建物の撤去請求が考えられます。

 眺望がその所有者等の利益であることはその通りなのですが、これに対する法的保護としては、日照に比べて低いものとされています。眺望侵害に基づく損害賠償請求はなかなか認められるものではありません。

 法的保護に値する眺望の利益として、大阪地方裁判所平成4年12月21日判決は、以下のように判示しています。

 一般に、眺望は、風物がこれを見る者に美的満足感や精神的安らぎ等を与える点において、人間の生活上、少なからぬ価値を有するが、眺望の利益は、当該場所の所有ないしは占有と密接に結びついた利益であり、その場所の独占的占有者のみが事実上享受しうることの結果として、その者に独占的に帰属するにすぎず、その内容は、周辺における客観的状況の変化によっておのずから変容ないし制約を受けざるをえないものであって、眺望の利益が常に法的保護に値するとはいえない。しかし、特定の場所がその場所からの眺望の点で格別の価値をもち、眺望の利益の享受を一つの重要な目的としてその場所に建物が建設された場合のように、当該建物の所有者ないし占有者によるその建物からの眺望利益の享受が社会観念上からも独自の利益として承認せられるべき重要性を有するものと認められる場合には、法的見地からも保護されるべき利益であるということができる。

 大阪地裁の判断基準を前提とした場合、眺望の利益は、常に法的に保護されるものではなく、独自の利益を有する場合に保護される旨判示しています。

 日照が一般的に法的に保護されるものであるのに対し、眺望の場合は、法的に保護される場合は限定的ということになります。

 さらに、大阪地方裁判所平成11年4月26日判決は、眺望侵害が違法になる場合について、以下のように判示しています。

 眺望の利益の右のような性質、眺望はそれが得られることによって快適な生活に資するものの、生活に不可欠とはいえないものであることを考えると、眺望の侵害が被侵害者に対する関係で違法なものとなるのは、被害土地及び建物の立地環境、位置、構造、眺望状況、使用目的、加害建物の立地環境、位置、構造、眺望妨害の状況、使用目的、眺望妨害についての害意の有無などを含む諸般の事情を勘案して受忍限度を超えると認められる場合に限られるというべきである。

 今回は、眺望に対して一般的な考え方をご説明しましたが、次回以降は、具体的な裁判例、さらには、よく問題になるマンションを販売した業者が別の場所にマンションを建設し、その結果として眺望が侵害されたといった事例を紹介したいと思います。

 
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