住宅関連の建設を行っている47社(※)を対象に、売上当たりの経常利益比率(経常利益率)をランキング化しました。相続対策や土地活用など活況な住宅建設業界ですが、経常利益率が高い会社はどこだったのでしょうか?(リビンマガジン編集部)
※注1(編集部基準)
最終更新:2017年11月20日

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(画像=写真AC)

■上位2社に見る低コスト商品の高い利益率


ランキング1位のフィットは、低価格のコンパクト住宅と投資家向けの太陽光発電を軸とした企業です。2位のウエストホールディングスも、全国に太陽光発電工事を展開しています。フィットは、前期と比べ経常利益率が下がっており、ウエストホールディングスも売り上げが前期よりも約100億円減額していることから、決して業績が好調なわけではありません。

しかし、これら2社に共通しているのは、建材費などにコストをかけない商品で高い利益率を出しているという点です。

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■住宅建設業界を取り巻く「人手不足」「建材費高騰」問題


一方で、前期よりも売り上げを伸ばしながらも経常利益率が下がっている会社もあります。23位の桧家ホールディングスや、37位のパナホーム、45位の土屋ホールディングスなどです。全てに当てはまるわけではありませんが、こういった経常利益が下がる要因として建設業界の「人手不足」と「建材費高騰」が挙げられます。

一般社団法人日本建設業連合会の「建設業ハンドブック 2017」によると、2016年の建設技能労働者数は495万人でした。これは、ピークの1997年(685万人)の72.3%という数字です。同時に従事者の高齢化も進行しています。国交省による「建設労働需給調査結果(平成29年9月調査)」では、前月よりも1.5%の人手不足という発表で、毎月不足幅が拡大しています。これから、建設業界では人手不足がより顕著になっていくと考えられます。

そういった背景から、企業は優秀な人材を確保することを求められます。それによって労務費が高くなり、利益を圧迫しているという構造ができあがっているのです。

また、建材費の高騰も、利益率低下の要因となっています。
一般社団法人経済調査会の「建築資材価格指数」では、2010年度の全国における建設建材指数が100.0すると、2017年1月では105.7、同年10月では109.3と、次第に高騰していることが分かります。

建設資材価格指数

(画像=リビンマガジンBiz編集部)

※参照データ:一般社団法人経済調査会「建築資材価格指数

相続税対策による土地活用需要や、戸建住宅の着工数の低下などから、建設業界は「ピークアウト(頂点に達して減少に転じること)を迎えている」と語るのは、日本証券アナリスト協会検定会員 ハッピーライフ・未来ラボ代表の青沼英明氏です。

需要が低下していく中で、採算の悪い案件や、受注競争が起こり、より業績が悪くなる企業が増えていくと考えられます

■効率良くマンションを建てる長谷工


青沼氏は4位の長谷工コーポレーションに注目します。

マンション建築大手の長谷工コーポレーションは、建材費が高騰している現状にも関わらず、利益率を大きく伸ばしています。

「長谷工コーポレーションには、マンションを効率的に、そして安く建てるノウハウがあります。そういった背景から、三井不動産や三菱地所が展開するマンションブランドの施工下請けも好調のようです」

好調な企業がある中で、業界全体では今後低調になる可能性があります。青沼氏は、多くの企業が利益率を落とすと考えます。

大和ハウス工業が物流倉庫や海外事業に注力しているように、各社もより伸びる市場に目を向ける必要があります(青沼氏)」

今、建設業界は時間外労働の自主規制導入や、週休2日の取得を進めています。2016年、新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性が自殺した問題などが、大きな波紋を呼んでいるようです。

事業転換ができる軽いフットワークや、従事者の職場環境を重視することが、建設業界で生き残る一つの指標だと考えられます。

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【取材協力】
青沼 英明
ハッピーライフ・未来ラボ代表。CFP、宅地建物取引士、日本証券アナリスト協会検定会員、トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員資格。外資系等証券4社で証券アナリスト。2012年3月より、資産運用・財産管理コンサルティング・サービスのほか、生命保険代理店、証券仲介業、不動産・老人ホーム紹介業等を兼業。

 
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