上場不動産会社106社(※)を対象として、役員の平均報酬額と、社員の平均年収の差をランキングしました。不動産業界においては、役員と従業員には何倍の収入格差があるのでしょうか。加えて、1億円以上の報酬を得た役員と社員の給与格差も調査しました。

※注=編集部基準

集計方法

・2017年11月期から2018年10月期までに公表された企業の有価証券報告書より集計

・取締役、執行役の報酬と従業員の平均年収の差を調査

・取締役には監査等委員会設置会社の監査等委員を含む

・監査役設置会社の監査役および社外取締役の報酬は除く

・役員報酬総額は、基本報酬、ストックオプション、賞与等を合算

・役員報酬総額を対象の役員の数で割り、一人当たりの平均役員報酬を算出

・平均役員報酬が、従業員平均年収の何倍になるのかをランキング化

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役員と社員の収入差が20倍以上の不動産企業は3社 10倍以上は8社

1位はプロスペクトで、役員報酬が平均4億3,734万円に対し、従業員の平均年収は914万円と、47.86倍もの差がありました。プロスペクトは首都圏を中心に、新築マンションの分譲を行っており、また、太陽光発電事業も展開しています。

プロスペクトは、2018年12月まではアメリカ人のカーティス・フリーズ氏が社長を務めていました。そのため、米国の企業風土を反映したのでしょうか、役員と社員の格差が大きくなっていました。しかし、12月13日に社長が交代して田端正人氏が就任したため、今後は収入差が縮小する可能性があります。

2位はサンヨーハウジング名古屋で、役員の平均報酬が1億7,974万円に対し、従業員の平均年収は539万円と、33.36倍の差でした。サンヨーハウジング名古屋は愛知県を中心に、関西圏で注文住宅事業や戸建分譲事業などを幅広く手掛けています。

サンヨーハウジング名古屋を創業し、東証一部上場企業にまで成長させた宮﨑宗市氏が、2018年9月に69歳で亡くなり、退職慰労金を含めた多額の報酬が支給されています。今期は創業者の死去という特殊な出来事があったため、来期以降は役員と社員の格差は縮小することでしょう。

3位は住友不動産で、役員の平均報酬が1億5,250万円に対し、従業員の平均年収は649万円と、23.49倍の差でした。住友不動産は不動産企業大手で、都心におけるオフィスビル賃貸や大規模再開発、ハイグレードな新築分譲一戸建「J・URBAN」シリーズなどを手掛けています。

住友不動産は以前ご紹介しました「上場不動産会社従業員数ランキング」にて、単独での従業数が第1位の5,732人となっています。

上場不動産会社従業員数ランキング(単独・連結)2019年1月集計

従業員数が多い分、新入社員から管理職まで年収のバラつきが大きく、収入格差につながったと考えられます。

上位3社のうち、1位のプロスペクトと2位のサンヨーハウジング名古屋については、社長交代で今後は格差が縮小する見込みです。来期以降も引き続き格差が大きい状態が続くのは、3位の住友不動産のみと予想されます。

過去記事である「不動産業界 役員と社員の収入差ランキング2017年版」では、住友不動産が収入格差第1位となっています。

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不動産業界 役員と社員の収入差ランキング2017年版

また、役員と社員の年収差が10倍を超える企業は、以下の通りとなりました。

4位 APAMAN(16.41倍)

5位 カチタス(14.98倍)

6位 オープンハウス(11.68倍)

7位 ゴールドクレスト(11.10倍)

8位 サムティ(10.22倍)

調査した企業106社全体の格差の平均は、5.39倍でした。

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役員別報酬ランキングとの収入差は?

続きまして、役員別の報酬額と社員の平均給与の差を調べました。以前の記事で、1億円以上の報酬を受け取っている役員をランキング形式で紹介しました。

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不動産業界 役員報酬が多いランキング 2018年10月集計

こちらのランキングを、社員の平均給与と比較すると以下のようになります。

(※黄色は前回記事から数値の変動があった企業になります。)

プロスペクトとサンヨーハウジング名古屋は、今後役員報酬が減る見込みなので考慮外とすると、役員個人と社員の収入差は、格差の大きな企業では30倍以上になることが分かります。

2018年11月の日産自動車のカルロス・ゴーン氏の逮捕以来、一流企業の多すぎる役員報酬が社会の注目の的となっています。不動産業界も今後は、高額な役員報酬に対して、株主や従業員からの厳しい目が向けられるようになるかも知れません。

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