遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。

これまでの商慣習や仕組みごとかわり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。(リビンマガジンBiz編集部)

matsuri technologies・吉田圭汰社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

matsuri technologies(東京・新宿区)は、民泊運営事業者向けのシステム開発、子会社では民泊管理事業を行っている。同社が提供する民泊管理システム『m2m Systems』は登録件数が15,000施設を超えており、この数は全国でもトップだ。2018年5月には数億円の資金調達を行ったという報道も流れた。6月15日本格解禁される民泊市場で、どんな存在感を放っていくのだろうか。吉田圭汰社長に話を聞いた。

―事業を拡大していますね。

当社では子会社で民泊管理事業者の免許を取得しました。民泊運営の代行業務について準備は万端です。民泊に向いた物件があれば、集客から運営までトータルで受けることもできます。ただ、ホテル・旅館も含めた宿泊マーケットは競争が激化しています。本当に宿泊客が集められるかを考えると対応できるエリアは限られてきています。

民泊については、様々なサービスを提供されていますね。

先ほどお話ししたように、民泊運営をトータルで任せていただくこともできますし、部分委託もできます。例えば、当社で開発しているシステムだけ提供したり、民泊利用客向けのメールサポートや電話でのカスタマーサポート代行であったり、チェックイン業務だけを代行する方法もあります。メールや電話などのサポートは24時間対応ですので、非常に喜ばれています。

6月15日の民泊新法が施行されます。民泊営業については180日間制限が加わります。

民泊新法が施行される中で、大きな制限だと認識しています。日数の制限もありますが、用途地域が限られるようになりましたし、マンション管理規約で禁止される動きも強まっています。民泊市場では大きな運営代行会社が300社ほどあるといわれていますが、今後は30社ほどしか残らないんじゃないかと言われています。

数百室の民泊を運営している代行会社でも、もう「代行をやめる」と言っている会社もあります。そういった情勢の中で、誰かがリスクをとってでもマーケットを作っていかないと、民泊が健全なビジネスとして発展していかないと思っています。

最新の統計では、2017年にAirbnbを使って民泊に宿泊した人は国内で580万人いたと発表されています(訪日旅行客数は全体で800万人)。観光庁は観光客「4,000万人計画」を掲げていますが、この目標には民泊が必要不可欠です。実は民泊というのは、日本国内の訪日旅行マーケットに対しては、なくてはならないものになっています。

規制して排除するだけでなく、枠組みのなかで健全な発展が必要と考えるわけですね。

当社に「民泊をやりたい」とご相談いただくのは、東京なら新大久保や大阪ならば西成などに物件を所有するオーナーが多いです。駅から近いのに、築古で家賃も安い物件です。こうした物件の収益改善のためには民泊に転用するのは有効ですし、地域にとっても空き家のままにしておくより貢献できることが多いと考えています。

また収益性が低下したホテルも我々の民泊運営ノウハウで貢献できています。すでに現在1,200室ほどのホテルと民泊でカスタマーサポートや運営代行を受託しています。

山中湖畔のホテルから民泊運営にも相談がありました。こうしたホテルは、かつては社員旅行や研修などで年中人気の施設でした。しかし、最近では企業や地域の団体旅行は減っており、稼働率の低下に苦労しています。このようなエリア、建物でも当社がAirbnbを使った集客をすることで、稼働率が高まり始めています。ちょっとずつインバウンドの恩恵が地方へも波及しているんですね。

Airbnbなどの民泊は、外国人観光客に向けた日本の窓口として、強い競争力があります。規制、排除の流れだけでなく、有効活用する知恵も必要だと思います。

>>続き:民泊に対するイメージやリスクをどう解決するか

 
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