2018年6月15日から、民泊に関する新法が施行される。グレーだった法制面がクリアになった。民泊に関連する法人からは本格的な普及が期待されていた。しかし、ふたをあけてみると民泊の開業届出は伸びていない。法制化にともない、自治体ごとの規制やマンションでの管理組合規則が強化されたからだ。市民からの民泊に対する風当たりは強い。matsuri technologies(東京・新宿区)・吉田圭汰社長は逆風のなかで、どういった突破口を見いだしているのだろうか。(リビンマガジンBiz編集部)

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matsuri technologies・吉田圭汰社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―訪日、外国人が増加するなかで、不動産活用に悩むオーナーや不動産会社からは、民泊に期待する声が大きかった。しかし、規制が強化される地域も多く、最初にあった期待感はしぼんできています。

民泊は簡単に儲かるものではないです。それでも、訪日外国人が増えて、宿泊需要が増えているのは事実です。やはり他の不動産ビジネスと同様に、取り組み方が大切だと思います。

ホテルと民泊で悩んでいる事業者も多いと思うのですが、私はリスクをとるならホテルで、リスクを抑えるなら民泊が良いと考えています。確かに、民泊には180日制限といったリスク(制限)もあるのですが、撤退の費用はホテルに比べれば非常に少ないです。

―しかし、ホテルの建築も増えています。宿泊需要も右肩上がりを続けるとはかぎりません。

確かに、そうですね。それに加えて、最近はカプセルホテルが増えています。当社でもいくつか、カプセルホテルの管理委託をうけているので分かるのですが、かなり激戦になってきています。統計を調べると、カプセルホテルを使う単身の旅行者というのは劇的に増えているわけではありません。それにもかかわらず、急激にカプセルホテルが増えています。厳しい局面に来ていると思います。

こういった状況で民泊ビジネスの良さがあると思います。ホテルは10年ぐらいの事業計画で投資回収を考えます。でも、3年後のトレンドや流れというのは誰にも分かりません。だから、初期費用が低くて、すぐ始められて、今のトレンドに合わせて始められるのも民泊の良さだと思うんです。

―民泊ビジネスで使われるテクノロジーにはどんなものがありますか。

民泊ビジネスと関連して開発がすすんでいる無人チェックインサービスがあります。民泊だけでなく不動産ビジネス全般にも良い効果があるテクノロジーだと思います。

例えば、このシステムは貸し会議室などにも活用できます。ここの会議室(matsuri社)も、我々が使わない間は時間単位で貸し出しています。先日は、演劇の稽古場として借りてくる人がいました。ちょっとセリフを読む声がうるさくて、大変でしたが(笑)。

無人チェックインサービスを活用すれば、当社はHPでうたっているとおり、「空間の再定義」ができます。これまでと違う形で不動産収益が得られるようになると思います。

あとは民泊を通じて得られるデータにも大きなイノベーションの可能性があります。実は不動産業界すでにいろんなデータがあるんですけれども、データを活用するところまで進んでいないと思っています。データの活用の前に、データをきれいに集める。データの取得口が整っていないので、データをきれいに取得するツールをきちんとそろえないと、今は使えないデータが世の中に出回っているように感じています。

―チェックインの仕組みについて、もう少し教えてください。

当社でつくっているシステムについて説明します。一般的に民泊のチェックインに必要なのは、宿泊者名簿の取得とパスポートの本人確認です。これを手間をかけずに、効率よく行いたい。

パスポートでの本人確認をする際は、端末で写真を撮っています。あわせて動画でも撮ることが可能です。自治体の規制で、動画での本人確認が必要なエリアでも対応することができます。それでも鍵の番号を毎回変えたいなどの、鍵に関する困り事がある場合には、コンビニでのチェックインをおすすめしていますね。

―コンビニ以外でチェックインの環境を作るならどういったところが良いですか?

無人の場合は、一棟マンションの入り口にチェックイン機を置けると効率が良いですね。各部屋に設置するというのは費用もかかりますので。

また、今後はブロックシェーンを活用したシステムなども考えています。

>>2ページ目:25歳吉田社長が不動産業界で起業した理由

 
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