2018年12月21日
不動産テック

無償でVR技術を教えるアカデミー。VRと不動産の可能性(3ページ目)

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ラストマイルワークス・小林雄社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)



―そこでVRに特化したということですね。VRサービスに決めたきっかけは何だったのでしょうか。


アウトソーシング会社に勤めていたとき、依頼を受けてCGのパースを作ったことがありました。インテリアデザインや内観なども含めたCGです。


その案件は高い金額で受注でき、納品先のお客さんからもとても感謝されたんです。


そんなに完成度の高いCGを制作したカンボジア人スタッフですが、CG業界の経験が長いわけではなかったんです。でも、なぜかカンボジア人スタッフはCG作成ができるんです


聞いてみると、カンボジアでは大学で建築の勉強する時に建築CGを勉強していることが分かりました。


そもそもカンボジアを始めとした東南アジアは不動産バブルで、建築CGのニーズがとても高いんです。外資系の企業が東南アジアに参入する動きも活発で、当然そういった人材が求められているという背景があります。


また、「建築CG」というカテゴリーも重要です。ゲームやキャラクターモデリングのCGだとローカルなマーケットです。一方、建築系のCGはグローバルな市場で汎用性が高く、ビジネスチャンスがあると考えられていました。



―日本とカンボジアの大学ではそれほど異なるのですか。


実は私も大学で建築学部でしたが、日本ではCADは学ぶのですが、CGは学びませんでした。意匠などをメインにしているのであれば多少は学ぶかもしれませんが、私のように工学寄りの勉強をしている学生たちはCGを全く学びません。


それほど違いがあるんですね。


これはビジネスチャンスだと思いましたね。



―技術を活用することでカンボジア人が大きな利益を得ることができたのですね。


以前、日本のクラウドソーシング系の会社がCG制作のコンペをやっていたんです。私が間に入って、カンボジアのスタッフが参加したことがありました。他の参加者は全員日本人だったんですが、そのコンペでカンボジアのスタッフのCGが選ばれたんです。


カンボジアの新卒の初任給が2~3万円程度の状況で、そのCGコンペでの報酬は10万円です。3~4カ月分の収入です。


1件100円の間取り図作成をやっている人達からすると、考えられない報酬ですよ。



―それが起業のきっかけになった。


ただのCG制作会社ではダメだと感じていました。


付加価値になるようなサービスがないと。そう考えたとき、まだ世の中に出始めたばかりのVRに目をつけました。


VRのビジネスで成功している人はいないのだから、カンボジアで建築CGを作れる人材がVRの勉強をすれば、大きな付加価値になると思いました。


そこで、まずは人材を教育するところから始めたんです。



―どういった方法で教育を始めたのでしょうか。


CGなどの基礎技術を持っている人材に、プログラミングを教育するモデルを作りました。


ピラミッド型の組織を作っていて、一番下のアカデミーは学校のようなものです。1年前からVRの知識を無料で教えています。常に20人ほどの生徒が受講するフリースクールです。


その中から優秀な人を雇用します。まずは研修生、次に社員など、段階を作っています。



―企業が無料で人材教育しているというのは驚きです。


いつかは、カンボジアの人たちが自立して海外に向けた商品やサービスを提供して、豊かになれば良いという社会性を感じています。そのためには人材育成は必要です。


その結果として、優秀な人材が増えれば当社にもその恩恵があると思っています。




アカデミーの様子(画像=ラストマイルワークス)



―どういった方が受講されているのでしょうか。


学生が多いです。


授業は、全行程が3カ月スパンになっていて、皆真剣に学んでいます。

実際に、アカデミー生から社員になったのはこれまでで3名ほどですね。10人に1人くらいしかいません。



―今後、VRは不動産業界にどういった影響を与えると考えていますか。


VRは不動産事業社とお客様を繋ぐ共通言語なんです。


知識のないエンドと、プロの業者では基本的に会話が噛み合いません。しかし、VRによって見える化することで、エンドも理解することができる。


重要な要素になると思います。



―課題はありますか。


事業者にとっては知られたくない情報も多い。できれば隠して売ってしまいたい。全部見られるのを嫌っている企業もたくさんあります。


そこが難しいと感じています。


CG技術やクオリティが高くなるほど、リアルになって商品自体の粗も見えてくるので、導入しづらくなる要因が増えていきます。最近では、CGをフォトリアルに作り過ぎると、公取で問題になってしまうといったケースもあります。


クオリティが高くなりすぎて実写に近づけば近づくほど、実際に建ったあと、お客さんからクレームが増えてしまうのでは、といった懸念点も生まれてしまうんですね。


そこをどのように折り合いを付けていくかも重要なポイントだと思っています。



―今後の目標は何ですか。


今はカンボジアがメインなのですが、カンボジア以外にも拠点を広げていきたいと思っています。ベトナムやマレーシアにも拠点を持とうと思っています。


カンボジアは建築系CGに強い人材が多い一方で、システム開発ができるプログラマーは他国の方が多い。ベトナムやインドは、人材や制度が整っています。


そこで、国をまたいだ役割分担ができれば良いなと思っています。

プログラミングはベトナムで、CG・VRはカンボジアで、といった組織ができればより生産力が上がります。


早ければ2019年の4月までには次の拠点を持ちたいと思っています。



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