遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。

これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。

不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。

今回は、スペースシェアプラットフォーム『スペースマーケット』を運営するスペースマーケット(東京・新宿区)の重松大輔社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)

スペースマーケット・重松大輔社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―サービスについて教えてください。

『スペースマーケット』はいろいろなスペースを簡単に貸し借りできるプラットフォームです。

賃貸マンションやオフィス、事務所を契約するときは重説や敷金や礼金と行った初期費用が必要で、手間やコストがかかりますよね。そういった部分を一時貸しとしてより簡単に利用できるようしたいと考えています。

(画像提供=スペースマーケット)

シェアリングエコノミー市場において、モノやお金に加えてスペースのマーケットはかなり大きい。しかも、日本ではまだ成熟しておらず、潜在的な可能性がある分野です。不動産のマーケットは50兆円規模だと言われています。その規模にあわせてシェアの伸びしろもあります。50兆円の10%5兆円ぐらいはシェアに移行すると考えています。

サービスモデルは、スペースを貸したい人と借りたい人をつないで、貸す人と借りる人の双方から手数料をいただくかたちです。現在10,000スペース以上を取り扱いしています。

同じようなサービスが何社かありますが、当社がスペース数No.1です。

また、ユニークなスペースを取り扱っていることも特徴です。

廃校になった小学校やお城など、多種多様なスペースを揃えています。

いろんな場所が借りられるようになると、様々なシーンで利用してもらう機会が多くなってきました。映画館でセミナーをやったり、無人島でテレビ番組を撮影したり、などですね。

また、新しいスペースの使い方も出てきていて、直近だと「インドア花見」というものが増えてきています。これは「部屋の中で花見をしよう」というものなのですが、春先って寒いじゃないですか。天候・花粉や場所取りなども大変ですよね。そこで、造花や生の桜を飾った飲食店やスペース、窓越しに室内から桜が見えるスペースを貸し切って皆で楽しもうという企画です。これがSNSでバズって、お花見の新しい楽しみ方の定番になりつつあります。

インドア花見の様子(画像提供=スペースマーケット)

3~4月にかけてはこういったスペースがたくさん出てきます。

―スペースマーケットではそういった企画や仕掛にも積極的ですね。

利用してもらうきっかけを作り、需要を創造しています。

ユーザーからも「そういったことをしたいと思っていた」という声が多かったんです。

また、スポーツ観戦なども企画しています。

今、大画面のテレビが安くなっていて、レンタルスペースにも設置されていることが多い。リアルタイムでスポーツ観戦をしたい人の利用も増えています。こういった利用では貸し切りという部分も重要で、自分たちで食べ物や飲み物を持ち込んで、仲間と一緒にプライベート空間で観戦する。

他にも、全国的に古民家が登録されているのですが、コスプレイヤーの利用がかなり多く、コスプレの撮影会が毎週末行われていたりしています。ある古民家のオーナーさんは、維持費がかかるので取り壊して駐車場にしようとしていましたが、スペースマーケットに登録したところ、維持費以上の収益を上げられるようになったという話もあります。

無人島でコスプレイベント(画像提供=スペースマーケット)

住まなくなった家を時間貸しにすることで、何かあったときには自分が使うこともできるし、いないときは近隣の人が利用するスペースになると。一軒家なども使わないとどんどん劣化していくじゃないですか。劣化を防ぎつつ、しかも収益も生まれると。家賃分かそれ以上収益が上がるケースもあります。

―どういった利用シーンが多いのでしょうか。

法人利用では、会議やイベント、セミナーが多いですね。

あとは撮影です。テレビ番組やYouTubeの撮影で利用してもらうことも多いです。再現VTRなどでも『スペースマーケット』に掲載されている物件を頻繁に利用いただいています。

個人利用では、ハロウィーンやクリスマスといった季節イベントや、たこ焼きや餃子パーティ、子連れママ会などにも利用してもらっています。キッチン利用も非常に多いです。

他にも、プライベートな撮影会、多種多様な趣味を持った人たちが集まる会など、本当に様々ですね。

―あらゆる場面で『スペースマーケット』を利用しているのですね。

なぜ『スペースマーケット』が選ばれるのかというと、同じパーティを飲食店でやろうとするとかなりのコストがかかってしまうからです。当然、家賃や人件費、食材原価などが発生しますからね。また、2時間制など短い時間に制限されてしまうこともあります。

『スペースマーケット』では、スペースの利用料と持ち込んだ飲食物やケータリングの費用のみで、時間も3~4時間で利用する方が多い。

例ですが、10人で飲食店を利用した場合、2時間で合計5万円ほどの料金ですよね。『スペースマーケット』を使って、好きな飲食物を持ち込めば3時間3万円ほどで済みます。飲食店ならば、飲めない人も飲み放題になってしまったりしますが、『スペースマーケット』ではそういったこともない。こういった柔軟性もユーザーに評価してもらっていると思います。

>>次のページ:大手不動産会社との提携開始、不動産業界との可能性(2ページ目)

 
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