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スペースマーケット・重松大輔社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―集まって飲食する利用用途が多いんですね。

現在、スペースシェアの周辺サービスとのアライアンスを強化しています。

例えば、キリンビールとは新商品のサンプリングで連携しています。

スペースを借りると、冷蔵庫の中に新商品のビールが入っていて、ユーザーには無料でプレゼントしています。

ビールの新商品を買うのってなかなか勇気がいるし、きっかけがないと買わないじゃないですか。

それならば、パーティスペースをレンタルしたときに試供品があると。しかもユーザーは複数人でスペースを利用することが多いので、皆で飲んで感想を言いあう。そういう体験って重要だし、記憶にも残りやすいんですよね。

そういったところに目を付けて、家電・家具メーカーは、室内にサンプルを提供してもらったり、雑貨メーカーも室内のアメニティを置いてもらったりしています。

―提供している企業・ユーザー双方にとって面白い取り組みですね。

また、スペースのホスト(所有者)コミュニティのマネジメントの強化も行っています。ホスト同士のアドバイスや、ユーザーに喜んでもらうノウハウの共有なども頻繁に行っています。ホストのレベルを上げることにも注力しています。

―ホストはどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。

現在、数千人いらっしゃいます。

一般のオーナーもいれば、代行会社がサブリースして掲載するなど様々です。

3人規模の代行会社が100件以上の物件を運営しているケースなどもありますね。管理会社にも管理物件を掲載してもらっています。

スペースのボリュームが増えてくると、ゲストが様々な使い方をするようになって、ホストの収益が上がってくる。サービスが盛り上がると、代行会社などの周辺サービスも成長していくようなスキームになっています。

また、ユーザーによる物件レビューが溜まってきます。

レビューは財産です。良いレビューが集まる物件があれば、さらに良い物件が集まってきます。

あとはスペース開発なども行っています。

不動産会社や不動産投資会社と組むことで、物件のプロデュースや立ち上げの支援などを行い、運営は代行会社に紹介するなどですね。

シェアリングエコノミーの文脈では、自治体との連携なども強化しています。

現在、約10自治体と提携しています。自治体や行政の課題として遊休スペースがたくさんあることがあり、新しい産業や活用法を探すなかで『スペースマーケット』との提携を選んでいただいています。

スペースマーケット・重松大輔社長(撮影=リビンマガジンBiz編集部)

―重松社長は、シェアリングエコノミー協会の代表理事でもあります。

シェアリングエコノミーという新しいマーケット、文化を健全に発展させるために立ち上げました。現在260社以上に加盟いただいています。どの会社も伸び盛りの会社です。横の繋がりも生まれていて、どの会社も悩むポイントが似ているんですね。お互いにノウハウをシェアしたり、議論・相談したりできる関係性を構築しています。

―『スペースマーケット』は、月にどれぐらいの利用があるのでしょうか。

利用件数は非公開ですが徐々に伸びており、前年同月比200~300%が続いています。

―1万件以上のスペース数はどうやって集めることができたのでしょうか。

当初はいわゆる「足で稼ぐ営業」を行っていました。

しかし、ある程度物件数のボリュームが出てくると、インバウンドで直接申し込むいただく流れが生まれてきました。

様々なメディアで紹介されたことや不動産会社からの紹介、代行会社などもサービスを広げてくれています。

スペースシェアビジネスは資金力も重要です。適切に集めて適切に投下する。

当社は2015年に創業して、累計で数億円の資金調達を受けています。

プラットフォームとして圧倒的No.1になれば、ホストの方も『スペースマーケット』に登録して、たくさん借りてもらうことが分かる。すると、複数のシェアサービスに登録している方も、管理の煩雑さから、うち1本に絞ってくれたりするんですね。

―2018年11月には東京建物と業務提携されています。その目的はどういったものだったのでしょうか。

創業当初から、大手デベロッパーや大きな不動産会社にもスペースシェアに参入して欲しいと思って、提携や提案をし続けてきました。

ただ、大手企業とスタートアップ会社なので、なかなか進みませんでした。しかし、今回東京建物さんとはご縁があり、連携させていただけることになりました。

サービスリリース当時では、スペースの時間貸しはまだまだ一般的ではありませんでした。しかし、最近ではコワーキングオフィスを大企業が利用するなど、どんどん理解が進んでいる。すると、これまでの売買・賃貸に加えて、一時貸しの取引形態も注目されました。

そもそも、一時貸しは駐車場などでは一般的で、不動産会社の仕事と近いものでした。都心の一等地の駐車場では、月極よりも時間貸しの方が収益性も高いことも分かっている。そういった中で、ようやく駐車場以外でも時間貸しのビジネスモデルができることが、ホストサイドもユーザーサイドも分かってきている。

今回の東京建物との取り組みでは、モデルルームや保有している物件の中で上手く活用できていないスペースを活用することを目的にしています。『スペースマーケット』には、ショールームもかなりの数が登録されています。平日など、モデルルームの来客が少ない時間帯に貸し出すと、撮影や会議などで結構借り手が付いています。

また、将来的には、シェアを前提としたマンションなどのプロデュースも考えています。共有部をパーティスペースにして、外部の方でも利用できるようにする。そこから上がった収益は管理費に充当していくようなモデルです。

今後、シェアを前提にした住宅が当たり前になってくると思っています。

シェアで貸した収益なども想定することで、もっと大きな家に住めるといった選択肢も生まれてくるでしょう。平日、自分が仕事に行っている間、誰もいない家をスペースマーケットで貸し出しているサラリーマンも増えています。収益軸が増えることで、生き方や働き方の幅がもっと広がるでしょう。

>>次のページ:スペースシェアはこれから来る「ビッグウェーブ」(3ページ目)

 
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