ダイヤモンドメディア・武井浩三社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

―情報の非対称性によって、不利益を被るオーナーや消費者が存在しているといった話も耳にします。例えば、賃貸管理の周辺にはIT・テクノロジーを活用した様々なサービス現れています。すると、脱管理会社といった流れが生まれるかもしれません。不動産テックを活用することで、オーナー自身が個人で管理できる、といった世界になるのではないでしょうか。

最近、賃貸仲介会社の仕事がかなり変わったと感じています。

今までは無条件で1カ月分の手数料だったものが、無料や一律定額の会社が出てきました。

ある大手賃貸仲介会社では、売上構造を見ると、仲介手数料は半分ほどしかありません。コンシェルジュ的なコンサルティングからの付帯商品の販売が、半分ほどを占めています。これは、仲介会社が新しい価値を提供しているからと言えるかもしれません。

管理会社も同様に、本当に消費者に求められている仕事があると思います。

今はPM(プロパティマネジメント)として、管理業務や事務的な仕事が多い。しかし、その業務でさえ、ほとんどをアウトソースしている管理会社が多いですよね。率直に今のままで、管理会社の価値が認められ続けるとは思いません。

これからの管理会社は、2ステップ上がらなければならないと感じています。

1ステップ目は、PMからAM(アセットマネジメント)に移行すること。オーナーの資産運用です。

例えば築30年の駅徒歩15分の1棟アパートを持っているオーナーがいた場合、提案できる選択肢は多い。改修して長寿命化するのか、売ってしまうのか、外国人を住ませるのか、民泊としての運用はどうか。取り壊して駐車場、トランクルームはどうか、などを提案することに価値が生まれます。

本来、賃貸オーナーは事業者・経営者です。

これから賃貸経営の難易度が増していくなかで、全てのオーナーが考えることが得意なわけでも、時間があるわけでもありません。やはり、そのパートナーとしての管理会社は多くの場合に必要だと思います。

2ステップ目は、コミュニティマネジメントです。

コミュニティマネジメントとは、より良い人間関係を作ること、人間関係のデザインです。特定のエリアや物件に集まった人のコミュニティマネジメントこそ、管理会社が取り組む仕事になるでしょう。

日本は人口減少が始まっています。

地域コミュニティといった助け合いの意識が薄れてきている。

新しいコミュニティの形態が生まれないといけない。

でも、まだまだ、旧態依然とした形態が残っています。

例えば、現在のマンション組合法は多数決でしか決まらない。多数決は凄く画一的なものです。多様なものを取り入れたり、複雑な問題を解決できたりするものではありません。そういったなかで合意形成する方法を模索しないといけない。

都市開発や再開発計画といった地域の人達に大きな影響を与えることも、地方自治体は大手デベロッパーに丸投げしてしまうことも多い。そうして新しい建物が建って、一見するとキレイで、新しくて、格好良くなります。そこにテナントを誘致する。そのテナントは東京に本社をおいた大手チェーン店。税収は全部東京に持って行かれる。結局、地方創生になっていない。5年間の定期借家でテナントも出て行ってしまう。残されるものは何でしょうか。

新しい建物が悪いのではなく、誰を巻き込んで、誰のために必要な場所を作っていくのか、形にしていくプロセスが大切だと思っています。そのプロセスデザインが、まさに組織開発や都市開発なのだと思っています。

そういったコミュニティを上手く形成することこそ、管理会社や引いては不動産事業者の新しい方向性だと考えています。

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