サービシンク・名村晋治社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部

―競合サービスはあるのでしょうか。

チャットツールはいろいろあるのですが、賃貸仲介のクロージングに特化しているサービスはありません。広く見れば、賃貸仲介を全てオンラインでワンストップに完結させることを目標にしている不動産テック会社は、今後競合になるかもしれませんね。

我々は、あくまでもチャットを使ったコミュニケーションに特化し、そのほかの機能については、各機能専門の不動産テックサービスと連携していこうと思っています。

あとは、管理会社と入居者を繋げる入居者アプリも競合になる可能性があります。ただ、入居者と管理会社のコミュニケーションは難しいでしょう。なぜなら、管理会社は入居者とチャットなんてやりたくないからです。

基本、管理会社への連絡はクレームが多い。入居者のCS(顧客満足)を上げたいと考えている管理会社は少ない。本音では藪蛇を突っつきたくない。しかし管理会社も変わらなければならない潮目は見えつつあります。

―そういった点では、「アトリク」はあくまでも「賃貸仲介のクロージング」を前面に押し出しています。

今後は、賃貸仲介の市場でも顧客の取り合いになると思っています。部屋は余り、空き室のオーナーは家賃収入を求めます。

もしかすると、ポータルサイトの掲載料も青天井に上がっていくかもしれません。どうしても入居を決めないといけないのならば、媒体主が強くなるのは当然です。

そうなると、不動産会社は自社努力でどうすれば効率良くクロージングするのかを、考えざるを得なくなります。同時に複数社から提案を受けているユーザーに対しては、「コミュニケーション取りやすい会社だね」ということを醸成する必要があります。

画像提供=サービシンク

不動産会社は「怪しい」「騙されるのではないか」と疑った目で見られてしまう立場です。しかし、そういった問題もコミュニケーション方法で解決できるのではないかと思っています。

―名村社長は、長く不動産会社に向けてITやサービスを提供してきました。

先ほども言ったように、2000年にアルバイトとしてネクストに入社しました。

既にポータルサイトのホームズはありましたが、サイトは無名で、ウェブの受託開発がメイン事業で、18人ほどの会社でした。

なぜアルバイトだったのかというと、私には本業があって、声優をやっていたからです。ただ、稽古と収録がない日は、サイト制作からロゴデザインまでフルタイムでやっていました。

父親との約束で「30歳までに声優だけで飯が食えなかったら辞める」というものがあり。29歳の時に最後のオーディションに落ちたことで区切りがつき、声優を諦めました。

そのときには3年半アルバイトとしてネクストに勤めていて、今思えば虫のいい話ですが井上高志社長に「雇って」と言って、すぐに社員になりました。

そこから1年半経った時にネクストが受託開発事業をやめてしまったんですよね。

ホームズ事業が2004年頃から軌道に乗ったからです。私は個々のお客様と膝を突き合わせサイトやシステムを構築している受託事業への想いが強かったんです。結果として井上に私のわがままを聞き入れてもらい2005年にネクストを退職させていただきました。その後、ウェブ制作会社での役員を経て、2010年35歳でサービシンクを設立しました。

こんな風に、長く不動産業界と関わっていたことが私の強みです。不動産のことは地場・ポータル・中堅・デベ・管理・投資など全て知っています。それを強みにして、不動産業界に特化した会社として立ち上げました。

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