2020年11月13日
不動産テック

いい生活・前野善一社長 不動産業界でのDX普及には人のサポートが必須

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遠くない将来、不動産テックによって不動産ビジネスは劇的に変化すると言われている。これまでの商慣習や仕組みが変わり、無数の新ビジネスが生まれるかもしれない。


不動産テックに関連する企業経営者や行政機関などに取材し、不動産テックによって不動産ビジネスがどう変わっていくのかを考えてみる。今回は、いい生活(東京・港区)・前野善一社長社長に話を聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)




いい生活・前野善一社長 撮影=リビンマガジンBiz編集部


―いい生活社は、提供しているサービスが多岐に渡っています。一言で表現するならば、いい生活とは何をしている会社なのでしょうか。


不動産市場におけるあらゆるデータを当社のデータベースに集め、それを不動産市場のステークホルダー、例えば不動産会社やエンドユーザー、そして不動産業界向けのサービス会社に活用していただくことをメインとしている会社です。


「ESいい物件One」や「pocketpost」といった当社のサービスは、データベースをあらゆる分野で提供する1つの仕組みです。



―「不動産テック」や「DX」といった言葉がない20年前から事業を展開していますね。


日本でもやっとDXやクラウド、SaaSなどと言われるようになってきました。我々が20年前から言い続けてきたことです。当社が最初に不動産会社に向けて提供できたDXによる付加価値は、媒体のデータコンバートでしょう。


今では、あらゆる会社が媒体コンバーターを提供していますが、2004年頃まではリクルートやHOME’S、アットホームといった媒体はデータ連動やコンバートを受けていませんでした。つまり、媒体ごとに手動で入力しなくてはならなかった。


生産性の低い業務が当たり前になっていて、「これはおかしい」と感じました。不動産業は大量のデータを扱わなければならず、データは正確でなければいけません。なおかつ1回あたりの取引金額が小さい賃貸業ではお金をかけられない。そこで、媒体にデータ連係を受けて欲しい、と最初に要望し、実現させたのは当社です。


データの連携によって時差がなくなり、どの媒体にもスムーズにデータが集まってくるということは、媒体の価値を向上させているはずです。そして、その後の十数年間でかなりの労働生産性向上に寄与することができたのではないでしょうか。



「ESいい物件One」 画像提供=いい生活



―現在の不動産テック企業についても聞かせてください。ここ数年の不動産テック企業には営業力が弱すぎるという声があります。その点、いい生活社はむしろ「営業を頑張っている会社」というイメージがあります。


営業力は重要ですね。


マッキンゼーが直近で面白いレポートを公開していました。コロナ禍においてのDXレポートです。そこには、「日本の企業にとってシステムはコストであるという認識」だと書かれていました。


そして本来、システムはコストではなく「イネーブラー(enabler:成功・目的達成を可能にする人・組織・手段)」、不可能を可能にする武器であると認識しなければいけないとありました。


イネーブラーという考え方は、まだまだ日本の不動産会社には一般的ではありません。つまり「これはコストだけれども、どれだけのリターンを生む投資であるか」をきちんと説明できなければならない。だから営業が必要なのです。これだけ、コロナでDXとかリモートなどと叫ばれていますが、不動産業界はシステムの投資になかなか意識を向けにくい。そういったなかでは説得営業は重要です。



―良いサービスができれば勝手に売れていくと考えている会社も多いです。


理想は良いものが勝手に広まっていくことだと思っています。しかし、それは簡単なことではありません。


例えば、Amazonが提供するAWS(Amazonが提供するクラウドサービス)は、かなり利用者が増えていますね。一見するとAmazonはオートメーションのイメージがありますが、実はAWSには担当者がついてくれて、丁寧にサポートしてくれる体制が整っています。実は、人による対応がかなりの部分を占めている。だからこそ、ビジネスが伸びています。


もちろん、オートメーションで売れることは理想です。当社もそういった類いの商品をもっと増やしていこうとは思っています。しかし、人による説明や営業、サポートはまだまだ重要な要素なのです。



次のページ:不動産業界のITリテラシーは向上してない(2ページ目)


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